日本マイクロソフトは10月23日、年次ユーザーカンファレンス「The Microsoft Conference 2014」を2日間の予定で開幕させた。基調講演を務めた代表執行役社長の樋口泰行氏は、2月に就任した米Microsoftの最高経営責任者(CEO)であるSatya Nadella氏を紹介。Windows一辺倒の傾向があったとする以前の体制から、iPadやAndroidへの対応や、Windows AzureでIBMなどと協業するなど、Microsoftが「全方位戦略」を打ち出していることを強調した。
「NadellがCEOになり、iPadやAndroid対応をはじめ、AzureでのLinuxサポート、Oracle、SAP、Salesforce.com、10月22日はIBMとの提携を発表した。さまざまなものがAzure上で動くようにする全方位戦略に切り替えている」(樋口氏)
チャレンジャー精神を持った事業展開と1人あたり生産性アップを強調した樋口氏
Windowsタブレット広がる
全体戦略を説明した上で、樋口氏はタブレットを活用したいくつかの企業の事例を紹介した。
小田急電鉄は顧客へのすばやい情報伝達を目的にWindowsタブレットを導入
小田急電鉄は、2020年の東京五輪を見据え、鉄道サービスにおけるマルチ言語対応を進めている。課題は、電車の遅れなど非常時に運行情報を早く正確に利用者に伝えること。そのために、駅員をはじめ、幅広い社員がWindowsタブレットを利用している。
小田急電鉄の経営政策本部IT推進部の部長を務める後藤真哉氏は「IT部門としてはセキュリティの確保が気になる」と話した。
ローソン、中外製薬といった他の導入企業も同様のニーズを持っていた。また、三井住友銀行は4Kの高精細端末を使ってB3の大型ディスプレイによる接客を、TBSテレビは天気予報などでフリップを4KのWindowsタブレット端末で電子化した。
樋口氏は「他社タブレットではなくWindowsが選ばれている理由はセキュリティと管理性の高さ」と指摘。ビジネス用途のPCで幅広く使われているWindowsの強みが、タブレット分野で生きていると強調した。また、4Kの高精細ディスプレイなどの素材を交えることで、従来にはなかった用途にタブレットが利用できることを示した。
三井住友銀行は4Kの高精細端末を使ってB3の大型ディスプレイによる接客
Dynamics CRMが中核製品に
端末からソフトウェアに話を移した樋口氏が最初に紹介したのは「ビッグデータの民主化だ」とする「Power BI for Office 365」。多くのユーザーが使い慣れているExcelで、現場の担当者がそれぞれの業務をデータ分析しながら遂行できるようにするのが狙いだ。
特徴は、Nadell氏がMicrosoftの今後の3大中核製品としている「Dynamics CRM」との連携だ。
顧客を管理するアプリケーションであるCRMとPower BI for Office 365を組み合わせ、詳細な分析をできるようにすることで「顧客関連情報の一元化などによる営業生産改革、情報の多角的分析による経営意思決定改革を進められる」としている。
こうした分析機能を利用し、効果的なテレワークなどを実現するコミュニケーション基盤として、「Lync」や社内SNSの「Yammer」にも触れた。
Office 365やYammerのユーザーである伊藤忠商事は、相手の情報に応じたコミュニケーションができるようになったこと、移動中でも社内にいるのと同様に活動できること、組織の壁を越えた連携が可能であることの3つを導入効果として挙げた。
Yammerでは、すでに100以上の「コミュニティ」が立ち上がっており、特徴的なものとして、産休や育休中の社員を対象としたコミュニティがあるという。
樋口氏は、7割の企業がクラウドの活用を優先検討しているというデータに触れながら、顧客のビジネスのクラウド化を支援するサービス「FastTrack for Office 365」を展開していることを紹介した。
このほか、米国家安全保障局(NSA)のEdward Snowden氏による機密情報の暴露で明らかになり、全米が揺れた監視問題に対して、最高執行責任者(COO)のKevin Turne氏による「政府からの情報開示に一切応じない」とのコメントを紹介。
また、Azure向けデータセンターについては、日本での拡充を強調。「(エンタープライズ向けシステムは)私自身の本業分野ということもあり、今後さらに注力する」と話した。
Azureのビジネス成長を強調した樋口氏