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まるで『スターウォーズ』--グーグルらが大規模投資したマジックリープのAR/VR - (page 2)

三国大洋

2014-10-27 07:30

 ひとつは、3Dディスプレイやゴーグルにつきものとされる視覚的な違和感――「3D酔い」という言葉がすでにあるようだ――の問題を乗り越えるために、Magic Leapが「digital light field」を応用している、というところ。

 「light field」を技術と呼ぶのが適切なのかどうかは迷うところだが、いずれにしてもLytroのカメラ――大量の情報を記録しておくことで撮影後でも焦点を変更できるのが特徴――で使われているのと同種のものであるのがわかる。さらにもう少し文章を追っていくと、今度は「ユーザーに(目にしている対象の)奥行きを把握するための手がかりをたくさん与えることで、映像・画像が違和感なく見えるようにする」云々という一文に行き当たった。この部分、原文では次のようになっている。

digital light fields will circumvent visual and neurological problems by providing viewers with depth cues similar to the ones generated by natural objects.

 人間の脳や視覚の仕組みについては不勉強でよく分からないが、おそらく(目に映る対象の)奥行きに関する情報もきちんと与えられれば、それを見る人間は違和感を覚えずに済む、それで3D酔いになることもない、ということだろうか。

 Markoffによると、light fieldを応用した既存のカメラやディスプレイで難点とされているのが、従来のデジタル画像に比べて5~6倍にもなる情報量の多さ(解像度の高さ)。Magic Leapでは、画像・映像の投影に独自の技術を使うことで、この課題をクリアしたなどとあるから、ある種のアルゴリズム=エンコード/デコード関連の技術が同社の売り物か、といった可能性も感じられる。

 もうひとつ目を惹く点は、この技術を使って生み出される3Dオブジェクト――“3-D Light sculpure”とあるので直訳すれば「光(線)でできた立体彫刻」となろう――が「見る者の網膜に投影される」というところ。それ以上の詳しい情報は載っていないので断定のしようもないが、ひょっとすると不格好なゴーグルなどつけなくても、こうした画像・映像が見られるようになる、ということかもしれない。この点については、「携帯電話をポケットからいちいち出し入れしなくても済む――1日中途切れることなく(情報に)接することができるようにしたい」云々とするMagic Leap創業者のコメントもある。

 この創業者のRony Abovitzという人物については、バイオメディカル関連のエンジニアで、Mako Surgicalという手術用ロボット技術の会社を創業し、昨年暮れにこの会社を16億5000万ドルで売却した実績の持ち主、という説明がある。そういうバックグラウンドを持った人物にとっては、網膜にイメージを直接映し出す、といったことは「すでに実現可能なこと」になっているのかもしれない。

 これまでこの分野の話、たとえばFacebookによるOculus買収などの話を見聞きしていて、「これが新しいコミュニケーションのプラットフォームになる(可能性がある)」というのが、なかなかピンとこなかった。

 ひとつには「仮想現実でのコミュニケーション」と聞いて、Second Lifeのような貧弱なイメージしか浮かばなかったせいもあろうし、また「ゴーグルをつけた者同士がするコミュニケーション」というと、どうしてもかなり限定されたもの(たとえばビデオゲームなどへの応用)という感じがしていたせいでもある。そういうものにあまり興味がない筆者には、正直「好事家が熱中する、よく分からない世界の話」という感じもしていた。

 だが、今回Magic Leapに関する話を読んで(依然として「よく分からない部分」も多いが)朧気ながらも分かってきたのは、いずれはたくさんの人間がスターウォーズに出てきたような形のコミュニケーションをするようになる、そんな可能性がすでに出てきている――。少なくとも、そうした可能性を現実のものとするために研究開発を進めている人間がいる、ということ。

 Dick Tracyの腕時計がスマートウォッチという形で結実するまでに何十年かかかったことを考え合わせると、Magic Leapがイメージしているようなものがいつ頃実現されるのかは無論分からない。ただ、そうした可能性の実現を目指す人間をGoogleのような大企業が後押ししたり、トップクラスのVCが彼らに大金を賭けたりしているという事実は注目に値することかと思う。

 WSJ記事の最後の部分には、今回の出資に参加した映画プロデューサーで監督のThomas Tull――Legendary PicturesのCEOのコメントがある。Magic Leapが作った映像は「信じられないほど自然で、思わず震えがきそう――部屋に入ると中ではドラゴンが飛び回っていて、驚きのあまり顎が外れそうだった(ぽかんとして口がふさがらなかった)……」といったものらしい。

(敬称略)

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