集合知と専門知の組み合わせが価値を生む
今回は、ビッグデータ分析で得られる集合知が、コンピュータで利用しやすいものであることと、専門知に代わる知見を得る可能性があるものであると述べた。
2点に分けて述べたが、実際は双方が合わさったところに、最も価値を見出すことができるだろう。専門的な判断をコンピュータに代役をさせることで、一気にビジネスのスケールを大きくしたり、新たなサービスを創出したりすることが可能になるのだ。
コンピュータは何かの商品名を言われても、その商品がどんなものかは理解できないが、その代わりデータがあれば、その商品がどのような売れ方をする商品なのかということはわかる。データを通してコンピュータが、この商品がどのようなものかを認識できると言い換えてもいい。ビッグデータ分析は、コンピュータが経験則を獲得する1つの方法なのだ。
コンピュータに世界の認識の仕方を教え、データを通して世界を理解させる。それによって最適化されたシステムが業務を改善し、データが変わる。そしてまたそのデータを通して、システムを最適化し直す。これが、データサイエンティストたちが取り組み、目指すべき理想のひとつと言えるのではないだろうか。
<図2: データによる価値創造サイクル>
- 小副川 健(おそえかわ たけし)
- 博士(理学)。専門分野は数学、特に計算機代数学と計算科学。2012年より富士通株式会社にてデータキュレーターとしてデータ分析業務に従事。さまざまな業種業務のデータ分析を手掛けている。Data Visualization Japan運営メンバー。訳書に『とっておきの数学パズル』(共訳、2011年、日本評論社)などがある。