三国大洋のスクラップブック

いまさらQRコードか--Apple Pay対応を拒否した米薬局チェーン - (page 2)

三国大洋

2014-10-31 07:30

決済手数料をめぐる主導権争い

 そうした部分がMCX側にとって重要なことは間違いなさそうだが、少なくともそれらと並んで大きそうなのが、決済手数料をめぐる主導権争いだ。小売事業者側では、各社が集まって独自に決済の仕組みを開発・導入すれば、既存のカード決済事業者を排除できるなどといった同構想のねらいについての説明、あるいは「MCXの試みが成功するかどうかはわからないが、Visaを苦しめられれば、どっちに転ぼうが構わない」とするWal-mart元最高経営責任者(CEO)のコメントもTechCrunch記事には引用されている。

 Apple PayでVisa、MasterCard、American Expressの大手カード決済事業者と手を組んだAppleは、MCX側にとっては目の上のたんこぶということになろう。

 この話のオチ――少なくとも現時点でのオチは、来年稼働開始を予定するMCXの仕組み(CurrentCというらしい)が「QRコードを使う」というなんとも時代錯誤なものであるというところ。


 スマホのロックを解除し、アプリを探して起動し、POS端末の画面に表示されたQRコードを読み取り、スマホと決済用サーバが(POS端末経由で)つながるのをじっと待って……といったユーザーの手間が、Apple Payのそれ――iPhoneをPOS端末にかざしてTouch IDに指先をあてるだけとは比較にならないほど面倒なのは間違いない。さらに悪いことに、CurrentCでは各小売業者が独自に発行するプリペイドカードやデビットカード(のアカウント)しか使えない。クレジットカードの決済手数料を支払いたくないMCX側の意思の現れだろうか。

 Apple Payへの対応を正式表明したBloomberg(大手デパートチェーン)あたりでも、そうした独自カード――「ストア・カード」、購入時にポイントが付いたりする――で買い物する顧客の割合が全体の半数くらいに達しているという話が、同サービス開始前後に出たBloomberg記事のなかにあった。そのことを踏まえると、Appleでもこの課題に対して将来的に何らかの解決策を示す必要があるとも思われるが、その話はいったん脇に置く。

 面倒な手間のかからないApple Payのような仕組みにいったん馴染んだ消費者が、CurrentCのような面倒なものをわざわざ使いたがるわけはない。そんな面倒を強いられるくらいなら、Apple Payが使える競合点に消費者は乗り換えてしまうだろう……。Daring FireballのJohn Gruberはそんなふうに書いている。

 Gruberが代表的なAppleファンボーイである点を差し引いても、この指摘は概ね的を射たものとも思える。ただし実際に消費者がどう反応するかという点は正直よく判らない気もする(たとえば、スーパーマーケットでよくあるような「ポイントX倍デー」に反応する女性客の気持ちがわからない、といった意味で)。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]