茨城県の笠間市は10月30日、要介護者の情報を市や要介護者の家族、地域の介護事業者や医療機関がタブレット端末などでリアルタイムに共有できるクラウド型システム「介護健診ネットワーク」を構築し、10月から運用を開始したと発表した。
高齢者への地域の包括的な支援、サービス提供体制、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援という目的を持ち、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるように支援する地域包括ケアシステムの実現を目指す。
市は、同ネットワークの活用により要介護者への介護、医療サービスにおける業務効率化やサービス品質の向上を図るとしている。

「介護健診ネットワーク」の概要図(日立提供)
今回運用を開始した介護健診ネットワークは、これらの情報をセキュリティを確保したクラウド環境に集約し、笠間市や要介護者の家族、介護と医療関係者が、インターネット経由でパソコンやタブレット端末などを利用して、リアルタイムに共有できるようになっている。
同ネットワークは、日立製作所や日立産業制御ソリューションズなどが2013年7月から2014年3月まで笠間市で実施した試験導入を経て、今回本格的に運用を開始した。なお日立は、笠間市での実績をもとに「地域包括ケア支援自治体クラウドソリューション」を開発し、7月から全国の自治体向けに提供を開始している。
10月からは、笠間市と家族をはじめ、社会福祉法人笠間市社会福祉協議会、笠間市内の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などとの情報共有を開始しており、2014年度中には救急隊との情報共有を開始するなど、順次対象を拡大する予定。
これまで笠間市や地域の介護事業者、医療機関、救急隊、薬局などの介護・医療関係者の間では、要介護者の緊急連絡先や要介護認定状況、健康診断結果、ケアプラン、お薬手帳、現在の病状といった情報を個々のデータベースに蓄積して利用していた。
このネットワークの導入により、例えば、これまでケアマネジャーなどの介護事業者が笠間市の窓口や要介護者の自宅に出向いて入手する必要があったような要介護認定に関わる資料などを、介護事業者自身のパソコンやタブレット端末から入手できるようになる。
また、要介護者の容態が悪化して救急車が出動する際には、対象者のこれまでの健康状態や介護状況、緊急連絡先などの基礎情報を救急隊員が速やかに把握した上で、病院や家族に迅速に連絡できるようにする。これにより笠間市は、市の職員や介護事業者の事務負担を軽減し、業務を効率化できる。また、介護/医療サービスの品質向上を支援し、今後増加が見込まれる要介護者への対応強化を図る。
笠間市は今後、市内全域の介護、医療関係者を対象に同ネットワークの導入を推進し、利用機関数を拡大していくとともに、本ネットワークに蓄積される、要介護者に関するケアプラン、介護、医療関係者のサービス提供実績や計画などの情報を活用し、要介護者への新たなサービスの創生を検討していく予定だ。
また、集積された要介護者の介護、医療事例をもとに、各地域の介護サービスの需給バランスの最適化や、保険給付の適正化など、笠間市の介護保険事業計画の強化に取り組んでいくとしている。