スマートマシン時代の到来

ロボットビジネスの覇権と可能性--注目されるロボットOS競争 - (page 2)

林 雅之

2014-11-07 07:00

ロボットビジネスの覇権と可能性

 成長分野のロボットビジネスの覇権を巡って、IT各社も大きく動き出している。Googleは、ベンチャー企業のSCHAFTや四足歩行ロボットのBoston Dynamicsなどロボット関連の先端技術を持つ8社を相次いで買収した。

 SCHAFTは、東京大学情報システム工学研究室から2012年5月に創業したベンチャー企業で、人型の災害救援ロボットとして開発。起業当初は日本のベンチャーキャピタルからは十分な資金を得られなかったが、米国防総省(DoD)の国防高等研究計画局(DARPA)が億単位の研究予算を与え、2013年末に開催されたDARPA主催のロボットコンテスト「DARPA Robotics Challenge」に参加し、圧倒的な大差で優勝している。GoogleはSCHAFTを2013年3月に買収しているが、その後のSCHAFTに関する情報は公開されていない。

 Googleのロボット関連企業の買収は、シリコンバレーをはじめとしたスタートアップ企業などに大きな興奮を巻き起こしており、ロボット市場は最も熱いテーマの1つとなっている。ロボット市場への参入する企業も増え、巨大なビジネスチャンスをつかむために激しい開発競争や買収が繰り広げられ、新たな市場の創造が始まっている。

 シリコンバレーにあるホテル「Aloft HOTEL」では、8月末からシリコンバレーのロボットスタートアップ企業のSaviokeが開発した「バトラー(執事)」と呼ばれる配達ロボットが、ホテル内を動き回っている。宿泊客が電話で注文した品物を、ホテル内ネットワークを無線でつながるバトラーがエレベータに乗り込み目的地のフロアで停止し、品物を効率的かつ確実に客室に届ける。

 デンマークに本社をおく「Universal Robots」は大型需要では対応できなかった多品種少量の生産ラインや狭い工場などに対応し、これまで人間が手作業でしていたラインに入り、人との協働ができるアーム型のロボットを開発した。日本語を含め、10種類以上の言語に対応し、直感的なGUIでのプログラミングが可能となる。Universal Robotsは、独Volkswagensのエンジン工場にも納入され、(※ 初出時、Universal Robotsの出資者として誤った企業の名前を記載しておりました。訂正してお詫び申し上げます。)事業の拡大が期待されている。

 ロボットを簡単に作れる時代も訪れようとしている。米Intelは、「21st Century Robot initiative」を設立し、「この先10年のロボットの未来像」についての開発や検証を進めている。Intelでは、3Dプリンタを利用してロボットを作れる製作キットを開発し、9月には第1弾の2足歩行ロボット「Jimmy」を発売している。

 ビジネスの現場では、Double Roboticsの「Double」に代表されるスクリーン付き可動式ロボットで遠隔で操作しながら会議で打ち合わせができる「テレプレゼンスロボット」が注目されている。

 米国では、在宅勤務者が600万人を超えており、多様なワークスタイルを支援する「テレプレゼンスロボット」の活用ニーズは増えていきそうだ。そのほか、工場の生産現場の視察や医療・介護分野や教育分野などさまざまな分野での活用が想定される。

 身近なところでは、人間と会話のできるコミュニケーションロボットで、ソフトバンクが2015年2月に税別価格19万8000円で発売を予定している「Pepper」をはじめ、岡村製作所の「ROBOTALK(ロボトーク)」、富士ソフトの「PALRO(パルロ)」、NECの「PaPeRo(パペロ)」などがある。

 海外では、米マサチューセッツ工科大学の研究者が開発を進める世界初のファミリーロボットと標榜する「JIBO」がクラウドファンディングでわずか2日間に、目標額の10万ドルをはるかに上回る50万ドルを超える資金を集めた。「JIBO」は、高さわずか30センチほどで、人間の声に反応してさまざまな表情で会話をすることができ、人間とロボットとのコミュニケーションのあり方を大きく変える可能性を秘めている。

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