スマートマシン時代の到来

ロボットビジネスの覇権と可能性--注目されるロボットOS競争 - (page 3)

林 雅之

2014-11-07 07:00

 ソフトバンクのPepperは、ソフトウエア開発キット(SDK)の無償配布やAPIも提供されており、サードパーティーからさまざまなロボットアプリが提供されるようになれば、コミュニケーションロボットだけでなく、さまざまな分野で活用が期待される。

 Pepperは、すでに法人分野での大規模導入も決まっている。ネスレ日本は10月29日、ネスレ製品を扱う全国の量販店などの売り場に12月初旬から20店舗での設置を始め、2015年末までに1000店規模での導入を目指すと発表した。Pepperは、売り場を通りかかる人をセンサで感知して声をかけたり、コーヒーマシンの説明などの接客、さらには、味の好みなどを確認して顧客にあったコーヒーマシンを提案する。

 PALROは、老人ホームなどの多くの介護福祉施設でゲームやクイズ、運動などの高齢者レクリエーションで人間の代行をする介護ロボットとして活躍し、介護スタッフの人手不足の軽減にもつながっている。

 矢野経済研究所が1月に発表した「介護ロボット市場に関する調査結果 2013」によると、2012年度の介護ロボット市場規模は1 億7000 万円で、2015年度から市場は本格化し、2020年度の介護ロボット市場規模は349億8000万円に拡大すると予測している。利用用途としては、介護予防支援、装着/非装着型移乗支援、移動(歩行)支援、排泄支援、見守り支援などのロボットの活用が挙げられている。

 危険な場所でもロボットは活躍している。東京電力福島第1原子力発電所の廃炉作業では、高所調査や放射能汚染物質吸引などロボットが大きな役割を担っている。最初に原発内部に入入ったのは米iRobotの「PackBot」だが、現在では、日本製のロボットが8割を占めているという。

 エボラ出血熱の感染拡大にともない、医療従事者への感染が目立っており、ロボットの活用も検討されている。医療従事者が感染する主な理由は、患者が使用する体液や分泌物、排泄物のついた病室やベッドからと言われている。消毒過程で感染したり、消毒が不十分のために感染してしまうケースも多い。

 感染の脅威を防ぐために、Texas A&M大学のCRASAR(Center for Robot-Assisted Search and Rescue)などのグループでは、ロボットが、消毒ロボットとして病室やベッドに入り、消毒薬の散布やUVライトを一定時間以上照射して完全に滅菌するといった作業の検討も進められている。

 警備の領域では、人間が歩くのと同じ程度の早さで移動可能なKnightscopeの警備ロボット「K5」が、米国の市街地やショッピングセンター、米Googleの駐車場などで、警察や警備員のサポート役として稼働している。

 K5は、モーションセンサを使って物体を検出し、4台のHDビデオカメラで周囲を360度監視している。異常な行動などを検出した際には、動画を記録して位置情報を付加して、警備員に通知する。

 また、1分間に300台のナンバープレートを読み取ることができ、盗難車を見つけ出して通行人の顔とブラックリストの犯罪者の顔データとを照合して犯罪者を見つけ出すといったことも可能だ。さらに、Twitterの投稿とビデオカメラやモーションセンサで検知したリアルタイムの状況とを照合する機能もある。

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