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解消すべきは心理的不満--ワークスタイル変革が失敗する理由 - (page 2)

林大介

2014-11-12 07:00

従業員の物理的負担と心理的負担

 社員がICT環境に不満を持っているということは、換言すればいくつかの場面で従業員に負担を強いているということになる。例えば下記のような不満は良く耳にする話である。

  • 会社に戻らなければメールが送れない
  • すぐに検証環境が必要なのに納期が長い
  • 大容量のファイルの受け渡しに手間がかる 

 従業員はさまざまな不満を持つが、これらは結局のところ「時間の負担」に帰結し、労働の効率を落としてしまう。言うまでもないが、従業員も時間を浪費したくないのだ。そのため、企業のIT部門はこれらの時間の負担(=無駄な浪費)を取り除く、もしくは軽減するための一手を打つことになる。

 スマートデバイスを使って社外からメールを確認する仕組みや、ウェブなど遠隔地会議システム、社内SNS、チャット、IaaS/PaaSの活用などがこれに相当するだろう。そしてこれらのシステムの導入効果は、KPIが設定され定量的に評価される。ここで登場するKPIとは、「出張費用」や「残業時間」がどのくらい減ったかといった、時間に関する指標であることが多い。

 この流れはとても一般的なものだが、実は従業員価値を最適化するワークスタイル変革という文脈で気をつけなければならない点がある。それは、「心理的」または「文化風土的な」要素が欠如しているという点だ。

 簡単な例を挙げよう。さまざまなICT技術を駆使し、移動や会議の時間の無駄を徹底的に削減したことで、1日あたりの実労働時間を2割削減できたとしよう。いつも20時に終わっていた仕事が今は18時に終わるというシチュエーションを想像して頂ければ、かなり大きな成果であると感じることができるだろう。

 しかし、この職場に「上司より先に帰れない空気」が蔓延していたとしたら、この削減した2時間は単なる空白であり、従業員の心理的な負担は軽減できない。むしろ、時間を持て余して新たなストレスを抱える可能性すらある。人間が感じる時間の長さとは、物理的な時間に関係なく感覚的なものだからだ(図2)。


 ここでの示唆は、労働時間の物理的な効率化は、従業員の心理的な負担軽減に必ずしも直結しないということである。システム導入は投資であるので、効果を算定しやすい物理的な時間に関わるKPIに傾倒しがちであるが、従業員の心理的な負担という観点を疎かしてはならない。

 この例に関して言えば、従業員の心理的負担の主要因は物理的な業務時間ではなかった。それよりも労働時間における裁量のなさが重くのしかかっていたのだ。これは実労働時間の効率化と同じレベルで取り組むべき課題であったということになる。

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