クラウドという言葉が、かつてのようにいわゆるバズワードとは呼ばれなくなってきた。老舗IT企業も、クラウド関連のサービスを盛んに開発、提供している。もちろん、企業ITの大きな領域を占めるのは今もオンプレミスのシステムであり、クラウドサービスは同時並行で進展している。
こうした中、基幹業務システム(ERP)を巡って、各社がクラウドを利用したプラットフォームを展開するようになってきた。大手のERPベンダーは、顧客関係管理システム(CRM)、サプライチェーンマネジメント(SCM)、人材管理(HRM)など関連ソフトウェアを持っており、まとめてクラウドによる展開をアピールしている。
このような動きについて、ユーザーのコンサルティングを実施し、システム構築のサポートを行っているITコンサルティングファームは、どのような見方をしているのか。アビームコンサルティングの岩澤俊典 代表取締役社長に話を聞いた。
ERPのクラウド活用は今後日本企業でも進むのか
アビームコンサルティングの岩澤俊典 代表取締役社長
岩澤氏は、1966年生まれで大手総合商社を経て、1997年にデロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社し、2009年より現職を務める。岩澤氏が現職に就任した2009年ころは、まだクラウドでERPを構築するということは現実的な話ではなかった。自社で仮想環境を構築してプライベートクラウドを持つというレベルでも、かなり進んだ企業だったと言える。
しかし、ここに来てのERPベンダーのクラウドプラットフォームへの傾斜はどう見ているのだろう。
「当社は主にSAPのソフトウェアを使って顧客の問題解決を図ってきました。しかし、SAPをはじめとするERPベンダーが、こぞって個々のアプリケーションではなく、プラットフォームでビジネスを進めるようになってくると、顧客のニーズには合わないケースも出てくる。わたしたちは、あくまでアプリケーションによる問題解決を提供しているので、ケースバイケースでの対応になると思います」
岩澤氏は、ERPという基幹システムそのものをベンダーのクラウドサービスで運用するというユーザーは今後増えてくるのか、という問いには次のように話す。
「海外の企業の中から、基幹システムを含んだすべてのシステムをこうしたクラウドプラットフォームで運用する企業が出てくると思います。そうした動きの中で、成功、失敗の事例などを見ながら日本企業からも追随するところがでてくるでしょう」