--IT関連のビジネスとしてはアナログで泥臭くあるようにも感じる。
流通業なので金融的な機能も必要になりますし、マーケティングもITも必要になります。すべて兼ね備えないとわれわれのビジネスは回りません。しかも(魚市場と料理人の営業時間、発注時間を考慮すると)24時間対応しなければなりません。従来の流通業者のように、早朝から昼間まで働き、仕事を片付けたら、家に帰ってビールを飲んで寝る。それではビジネスにはなりません。肉体だけでなく、脳みそも汗をかかないといけない。そのような日々を繰り返し、ようやく当社の取り組みが世間に響きだしたのは2013年くらいからです。やはり「自分しかできない」と思うと使命感が出てきますよね。
--流通のアナログの部分にITを取り入れたとき、商習慣などの問題はなかったか。
単にお金を払って買うだけのことですから、商習慣は全く問題なかったです。踏み込みづらいとか嫌がらせなども全くなかったです。それよりも、商品理解や顧客が何を望んでいるか理解し、需要を集めてくることのほうが重要です。それをくり返し、適切な商品知識を科学的に集積していくことで、さまざまなサプライヤーとの交渉もどんどん円滑になっていきました。
--現在注力していることは。
流通業、とりわけECで大事なのは価格、品質、品ぞろえの3つです。そして商品が多ければいいということではなく、欲しいものがちゃんとあるかが重要です。顧客が本当に必要なものは何なのかを考えて、それを確実に集めていきます。そこで必要となるテクノロジの利用やサプライチェーン構築に現在積極的に投資しています。
食料品ECサービスの八面六臂のアプリ
これは全ECビジネスに共通のことだと思いますが、発注してくるクライアント端末は、PC、スマートフォン、タブレットの3種類があります。それぞれのクライアントにおいて、ユーザーの購買体験上、一番ストレスなく買えるものを提供することが重要です。どんなにいい商品でも、購入するまでに40回クリックする必要があったら誰も買いませんよね。離脱してしまいます。そのユーザーエクスペリエンス(UX)、ユーザーインターフェース(UI)の作り込みがそれぞれのハードによって変わってくることが要素として大きいでしょう。
BtoCでは、一般的に服を買うときは1着で、5種類の服を買いません。八面六臂はBtoB、とりわけ飲食店向けですから、さまざまな商品を買うことが日々行われます。いろいろな商品を5品、10品と買うわけですから、1種類買うだけのBtoCとは当然違うUX、UIが必要になります。そうすると、いかにストレスなく早く買えるかが大事になります。バラエティが増えてくると、“or”の発想ではなく“and”の発想で量も種類も選びやすい、すぐに買えるUX、UIが必要です。そこで大事なのは「品揃え」「検索性」「カスタマイゼーション」の3つです。これらを担保するために、今後、画面の作り込みに注力していきたいと思います。