米VMwareとソフトバンクテレコム、ソフトバンク コマース&サービスの3社は11月5日、共同で設立したヴイエムウェア ヴイクラウドサービス合同会社を通じて、ハイブリッドクラウドサービスを国内向けに提供を開始すると発表した。
提供するのは「vCloud Air」。7月に発表した「VMware vCloud Hybrid Service」の名称を変更し、11月10日から販売を開始する。プライベートクラウドと連携するハイブリッドクラウドサービスで、仮想ネットワークやセキュリティを特徴とする。単一の管理ツールにより、仮想マシンの移行やプライベートクラウドとパブリッククラウドのアプリケーション連携が容易になるなどの利点があるとする。
記者発表会で話したGelsinger氏と宮内氏
来日したVMwareの最高経営責任者(CEO)、Pat Gelsinger氏は「エンタープライズ顧客を対象に、プライベートクラウドとパブリッククラウドの連携などによりサーバやネットワークの稼働効率を上げるのがわれわれの役割」と話し、Googleなど競合企業が提供するクラウドサービスとは一線を画していることを強調した。
法人向けに強い営業力を持ち、既に協業関係を結んでいるソフトバンクグループと連携することにより、日本でのvCloud Air拡販に期待しているとGelsinger氏は指摘した。
サーバ仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」を利用する企業は、既存システムの拡張リソースとしてvCloud Airを利用できる。また、vCloud Air上に構築したマシンに変更を加えることなく、プライベートクラウドに移設することも可能としている。
ソフトバンクは、VMwareのサーバやネットワークの仮想化技術を活用できることに加え、自社が所有するデータセンター経由でvCloud Airを提供するため、安全性と信頼性、コンプライアンスを確保できることを強調した。
ソフトバンク コマース&サービスの代表取締役会長を務める宮内謙氏は「かなり前から企業のIT環境がクラウド化すると思っていた。VMwareが主催するVMworldにも5、6回参加した。コンシューマー向けITがほぼすべてクラウド化しているのに対し、エンタープライズ向けは、基幹系システムにも情報系システムにも従来からの資産があるため、クラウド化は遅れている」との認識を示した。
さらに「クラウド間が双方向に連携することで、今後システムの規模が大きくなる。モバイルとクラウドをつなぐのはネットワークだと思っている」とし、自社が提供するVPNサービスなどにも期待しているという。
また、ソフトバンクテレコムが、法人向けクラウドサービス「ホワイトクラウド」を提供しているが、これについて、「vCloud Airに集約するのが望ましい」との考えを示した。 「昨夜の食事の席で、韓国向けにも事業展開をする話をGelsinger氏とした」と宮内氏は笑顔を見せ、Gelsinger氏も「今、交渉中なんだ」と切り返す場面もあった。
両社は、チャネルパートナーにとっても従来提供しているプライベートクラウド環境に加え、vCloud Airによって、顧客がハイブリッドクラウドシステムを構築するという選択肢を提供できる面で機会が広がるとしている。
vCloud Airのサービスメニューは「仮想プライベートクラウドサービス」「専有型クラウドサービス」「災害対策サービス」の3つ。3つのサービスの月額利用料はそれぞれ、11万385円から、98万9319円から、9万1508円からとしている。