分野や組織の壁を越えたデータ利用のための課題
データを活用する組織の課題として挙げられたのは、どこにどんなデータが存在しているか分からず、他社のデータを活用することの利点が見えないことや、法制度があいまいであり、消費者とのトラブルなどのリスクがあること、データを扱える場や人材が少ないことだ。
組織間のデータを扱うプラットフォーマーが持つ課題は、データを扱う事業者が新しいビジネスに挑んでいるため信用が少ないことや、データ産業の市場規模が現在は限定的であり資金調達が困難であること、契約や値付け、データ形式など取り引きに必要なツールが形式が標準化されていない点などを指適した。
データを「保有」する組織の課題は、「活用」する組織と同様、データそのものやデータ連携によって生まれる付加価値に気づいていないこと、データの活用方法や提供方法、データの帰属先などが不明であることが挙げられるとした。
課題への対応策
課題への対応策も同時に検討している。事業者間で連携を促すことだ。分野組織の壁を越えたデータの活用を促進するために成功事例や、データの種類や保有者を一定の開示フォーマットに基づいて公開する。データを共有するための契約書のひな形やデータの所有権、責任を明らかにするためのガイドラインの整備も検討する。
消費者への対応策として、消費者の理解と安心を得ることを優先し、パーソナルデータの取り扱いに関する説明を強化、すでに経済産業省が公表しているパーソナルデータの「事前相談 評価基準書」や「消費者向けオンラインサービスにおける通知と同意・選択のためのガイドライン」(ガイドライン)の活用を進め、ガイドラインの国際規格化に向けた取り組みを進めるとした。
関連する法制度の整備も進める。個人情報保護法を2015年の通常国会に改正法案が提出される予定であり、個人の権利や利益の保護とデータ活用による新事業創出の促進という2つの観点から必要な対応が講じられるよう働きかける。
人材育成について、具体的な人材像や事業者像を明らかにし、データ連携を得意とするプレーヤーの発掘や育成支援に取り組むとした。
ワークショップを開催
協議会は、情報共有やデータ取り引きのマッチングを促進する場として継続して開催し、民間団体などとの連携も含めて議論していく。
その取り組みの一環として、実際にデータを保有している事業者やデータを活用したい事業者、データ取り引きを仲介する事業者を広く募集し、具体的なビジネスアイデアの創出やビジネス化に向けた課題の抽出、対応策を検討するワークショップを開催する予定だ。
ワークショップでは東京大学工学部教授の大澤幸生氏らが提案する、データの中身は公開せずにデータの概要のみを記述する仕組みである「データジャケット」を利用し、データの匿名性や、所有権を保つことができる。
データ駆動型(ドリブン)イノベーション創出戦略協議会の目指す姿