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アジャイル開発とセキュリティを両立--マネーフォワード市川CIO - (page 4)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2014-11-20 14:58

--ウォーターフォールからアジャイルに開発手法を変えたということか。

 端的に言えばそうかもしれません。完全に作り込んでからリリースすると、自分たちが考えていたことが実は外れていたということもあります。できるだけ早い段階で提供してユーザーにプロダクトを見てもらい、その結果をもとに改善をしていく方がいいということです。アンケートを活用する方法もあるでしょうが、返ってくる答えには限りがあります。

 それよりも実際に使ってもらって、ログの分析などからそのシステムや機能がどう使われているか、興味はあると言われていても数えたら大して使われていなかったということもあります。できるだけ機能を提供しながら、一方で数値を追いかけて、仮説を立てて思った通りに機能が使われているか、使われていないのであればそれに対してどこが悪かったかを課題意識を持って対応し、前のバージョンよりも使われたかなどを確認しています。有料版の利用率上がったところを機能として無料版に落とし込むこともあります。

ユーザーと向き合う

--ベンチャー企業に移って、最も変わったことは何か。

 意思決定の速さです。もっとも組織の規模が違いすぎるので一概に比較はできませんが。それに、われわれとユーザーの2者だけで完結することも大きな違いです。証券や為替は証券会社がユーザーを抱えて、そこにシステム開発ベンダーがシステムを導入するので、三角形のつながりになります。

 システムベンダーの立場では、直接エンドユーザーとのコミュニケーションはできません。顧客である金融機関からの「ユーザーが望んでいるからこういうものを作ってほしい」という情報が要件になって、システム会社としてはそれをもとに工数や金額の見積りをして、納品して最終的に使われます。でもそれだと遅く、ダイレクトな判断ができない時もあります。ユーザーが本当に望んでいることではなく、発注側となる証券会社の言ったものを作らなければなりません。「本当は違うよな」と思いながら作ったプロダクトもありました。

 それに比べれば、今は純粋にサービスを提供する立場とユーザーの2社だけです。思い通り満足して使ってもらえたか、そうでなければ何が悪かったのか、そういうことがダイレクトにつながっています。現在の方が10倍くらい楽しいです。

--アカウントアグリケーションをうまく運用するための工夫とは。

 そこは最高技術責任者(CTO)の能力にかなり依存しているところになります。CTOがもともと持っていたナレッジもそうですが、このシステム用に設計、実装したさまざまなところをつなぐ仕組みは、マネーフォワードの武器のひとつとして有力と思っています。その仕組みをできるだけ簡単にしようとしています。

 その部分は社内数人のスタッフで運用しています。その規模でも日々の保守を回せるような土台を作って、約1700の金融関連サービスとのデータ自動取得・自動仕訳に対応し、接続を処理しています。競合サービスも出てきていますが、1700からのサイトとの連携や、そこで取れるデータの件数や精度は、負けないと思います。

 先日初めてヤフーにAPIを提供しましたが、たとえばTwitterみたいに個人ユーザー向けに使ってもらうイメージはあまり持っていません。取得したデータ、接続先からうちのデータベースに溜まっていくデータ、エンドユーザーの方が購買したものの履歴や金融機関の残高、入出金履歴などのセンシティブなデータなどを、われわれのサービスとしてユーザーに提供したりコミュニケーションしたりすること。それがまず基本だと思っています。

 われわれだけでツールを作っていると、サービスの伸びに限界があります。そこでヤフーと連携することで、その先のエンドユーザーに使ってもらえるような口ができます。それがあると、よりスケールすると思っています。とはいえ、かなりセンシティブなデータなので、相手が誰かとか、個人向けと言うよりは基本的に法人向けと考えています。その法人も、自由に接続できるようなAPIの解放ではなく、ちゃんと相手を見て、契約してインタフェースを取る前提でAPIを公開する。それを今後、ヤフーを含めて何社かに提供できていったらいいかと思います。

 ただ、APIをつまびらかにするわけにはいきません。相手もあることなので、しっかりデータの提供の仕方を考えながら企業向けに提供した情報をさらにBtoBtoCでエンドユーザーにどう間接的に提供でき、サービスとして使ってもらえるか。それがしっかりイメージできるところには、積極的にAPIを提供していきたいと考えています。

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