米エネルギー省、世界最速のスパコン開発へ--IBMとNVIDIAらを指名

Natalie Gagliordi (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2014-11-17 11:58

 米エネルギー省は、IBM、NVIDIA、Mellanoxと共同で世界最速のスーパーコンピュータを開発すると発表した。このプロジェクトには3億2500万ドルが投入され、2017年までに2基のスーパーコンピュータ、「Summit」および「Sierra」の完成を目指す。両コンピュータはIBMの「OpenPOWER」チップとNVIDIAの「Volta」グラフィックスチップを搭載し、全コンポーネントがMellanoxの高速ネットワーク技術で相互接続される。

 SummitはSierraよりも強力なスーパーコンピュータとなり、最大で150~300ペタフロップスという驚異的な演算速度の達成を目標としている。Summitは米テネシー州のオークリッジ国立研究所に設置され、民間および科学技術分野に活用されることになる。一方のSierraは100ペタフロップスの演算速度を目指しており、米カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所で核兵器のシミュレーションに活用される予定である。

 現時点における世界最速のスーパーコンピュータは中国の「天河2号」で、その演算速度は実に55ペタフロップスに達するが、SummitとSierraが計画どおりの性能を獲得すれば、天河2号を劇的に超えた演算速度が実現されることになる。なお、現在米国で最速のスーパーコンピュータはオークリッジ国立研究所が運用する「Titan」で、演算速度は最大27ペタフロップス。

 IBMは今回のプロジェクトにおいて、演算速度だけでなく、新しい「データセントリック」のアプローチを前面に推し出している。同社によると、データが存在するすべての場所にコンピュータの演算能力を振り向けることで、データ移動と消費電力を最小限に抑えることが可能だという。具体的には、SummitとSierraは毎秒17ペタバイトの速度でデータをプロセッサに移動できる。これは、Facebook上に存在する1千億枚の写真をわずか1秒で移動するに等しい速度である。

 IBMのSystems and Technology GroupのシニアバイスプレジデントであるTom Rosamilia氏は次のように述べている。「スーパーコンピュータに対する従来のアプローチでは、もはや爆発的に増加を続けるデータの処理に対応できない。今日の発表は、そうした従来のアプローチからの転換点となる。当社が打ち出したデータセントリックのアプローチは、コンピュータ開発におけるパラダイムシフトであり、オープンプラットフォームの未来を切り開くとともに、爆発的に増加するデータ量への対応を可能にする概念である」

 米エネルギー省は今回発表されたプロジェクトとは別に、さらに強力で電力効率の高いスーパーコンピュータの開発を目指す1億ドルの研究開発プログラム「FastForward 2」も発表している。このプログラムへの参加企業には、IBM、NVIDIA、Intel、AMD、Crayの名が挙がっている。米エネルギー長官のErnest Moniz氏は声明の中で、「米国の国際競争力を維持し、経済を安定させ、安全保障を確保するために必要な科学技術を開発するうえで、高性能なスーパーコンピュータは不可欠の要素である」と述べている。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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