富士通研究所は11月17日、LED照明などから「モノ」へ照射する光にID情報を埋め込み、その光に照らされたモノからID情報を復元可能な照明技術を開発したと発表した。
照明から照射する光に目には見えない通信情報を埋め込むことで、照明に照らされたモノから、スマートデバイスなどのカメラへの情報配布を実現するという。富士通研究所は、さまざまな設置環境で評価検証するとともに、同技術の精度をさらに向上させ、2015年度中の実用化を目指すとしている。
スマートフォンなどで目の前のモノについての情報を入手する手段としては、これまでにもNFCタグやQRコードなどの識別情報をモノに直接張り付ける方法、GPSをはじめとする位置情報に情報サービスを関連づける方法などが実用化されている。
しかし、識別情報をモノに直接張り付ける方法では、美観を損ねたり、対応機種が限られるといった課題がある。位置情報を利用する方法も、店舗やコーナーごとのエリア単位の情報をユーザーに配布するのには適している反面、目の前にある商品など個々のモノ単位で異なる情報を付与するといった、より細かい個体の情報配信への適用は難しい場合があった。
今回開発された技術は、LED照明から発する光の色を人の目には見えないレベルで変化させ、その光を照射したモノにID情報を付与するというもの。なお、LED照明に限らず、プロジェクタの照明などに応用することも可能。
主な要素技術は以下の2つ。
・色変調による情報埋め込み技術
カラーLEDはRGBの3色の光を合成してさまざまな色の光を照射することが可能となっており、そのRGBの各色成分から発する光の強弱を時間方向で制御し、わずかに変化させることによってモノを識別するID情報を表現。1つのLED照明につき、1つのID情報を付与する。

色変調による情報の表現と受信(富士通提供)
・反射補正技術
光がモノの表面で反射する際に反射率に応じて光の一部が吸収されたり、反射されるため、RGBの各波長に埋め込んだ信号は、反射時に一部が吸収されることによって弱くなってしまうことがある。カメラで撮影した映像に対して反射を考慮した補正を行うことによって、情報の検出精度を高めることに成功した。

反射補正による高精度化(富士通提供)
従来の技術では、ユーザーのいる場所に応じたエリア単位での関連情報の配布が限界だった。今回の技術ではモノ単位での情報配布を実現し、ユーザーはカメラをモノに向けるだけで、さまざまな情報を取得できる。
この技術により、店舗の商品、美術品、人物、建造物などさまざまなモノを情報の発信源にすることが可能となる。富士通研究所では、以下のような応用例を挙げている。
- 商品にスマートフォンをかざすだけで、商品情報を提供し、将来的には自動決済や配送なども実現可能
- 博物館、美術館で展示物にスマートフォンをかざすだけで解説動画をストリーミング再生
- 舞台上のタレントにスマートフォンをかざすだけで歌っている楽曲をダウンロード
- 観光地の歴史的建造物や看板などにスマートフォンをかざすだけでより詳しい情報や解説を母国語で表示

想定利用シーン(富士通提供)