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何を共有するか--新オルタナティブ投資から考えるシェアリングエコノミーの真髄

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2014-11-18 06:30

拡大する新オルタナティブ投資

 イギリスのイノベーション投資を行う独立基金であるNestaの調査によると、イギリスのオルタナティブ投資の市場は2014年末までに17.4 億ポンド(約3200億円)となり、2015年にはこれがおよそ44億ポンド(約8000億円)まで拡大するという。中小企業セクター向け融資に限ると、銀行による貸し出しの2.4%を占める規模になる。

 ここで言うオルタナティブ投資とは、デリバティブやヘッジファンドなどのことではなく、PtoPレンディングやクラウドファンディングなど、インターネットを通じて資金の出し手と受け手を直接に結びつけるタイプの投資を指している。日本においても、例えばクラウドバンクが立ち上げから1年でおよそ15億円の貸し出しを実現するなど、実績を積み上げつつある。

 このオルタナティブ投資、個人の持つ金融資産をその意志のもとに別の個人や企業に活用してもらうという点で、Airbnbなどと同様にシェアリングエコノミーの一端を担うものと考えることができる。つまり、社会における有限のリソースを、自らの意志のもとに共有するという点においては、何ら変わるところはない。

 違いは、活用する資産の形態が実物資産であるか金融資産であるかのみである。そしてそこには、シェアリングエコノミーに特有の、単に利益を上げるという要素に加えて、相手に対する関心や共感といったソーシャルな要素が入ってくる。

企業の変化

 投資のあり方が徐々に変化を見せる中で、それに呼応するかのように企業のあり方も変わりつつある。Philip Kotler氏は近著『グッドワークス!』にて、企業はもはや株主利益の最大化のみを目的とする存在ではなく、社会的課題の解決と利益を共に実現することを目指すべきだとしている。

 そして、「Global Sustainable Investment Review 2012」によると、社会的責任投資の規模は世界全体で全投資資産の21.8%にも及ぶという。同調査によると、日本においてはいまだ社会的責任投資が占める割合はわずか0.2%に過ぎないが、世界全体では、投資家も金銭的リターンだけではなく、そこに社会的責任の遂行が伴うことを求めているのだ。ここにオルタナティブ投資が加わることで、個人もより明示的にお金の使い方を選択することができるようになる。

個人の変化

 以前このコラムでも取り上げたが、収入の上昇と幸福度の相関は、収入が上がれば上がるほど小さくなる。過去の記事から引用すると、「年収が2万5000ドル(約258万円)から5万ドル(約515万円)に倍増しても、幸福度は9%しかアップしない。さらに年収が7万5000ドル(約773万円)を超えると、もはや幸福度には変化が見られない」のだ。

 Abraham Harold Maslowの自己実現理論と照らし合わせれば、この傾向は理解しやすい。生活面での安心が高まってくれば、個人の欲求は、金銭的なものから社会的なものへと変化していく。つまり、社会に貢献し、その役割を認められることが重要になっていく。これを投資活動に置き換えるならば、その投下資金が単に利益を上げることだけではなく、それが社会にどう貢献するかという観点が重要になってくるのである。

リーダー不在の社会

 今、社会は過渡期にある。経済成長の中心が先進国から新興国へ移ると共に、米国の指導力が相対的に低下し、中国が新しい指導者として名乗りを上げようとしている。

 しかしその変化の方向性は定まらず、経済問題、環境問題、地政学的問題など、多くの課題が解決されない状況が続く。そういう社会であるからこそ、企業や個人が利益のみを追求するのではなく、自律的な振る舞いを取ることが重要になる。

 シェアリングエコノミーとは、単にネットを通じて資産を融通し合う経済行動というだけでなく、社会的課題を共有し、それを個人や企業のレベルにおいて解決を図っていく経済行動であるとも言える。つまりシェアリングエコノミーの真髄は、資産だけではなく、解決すべき課題をも共有するところにあるのではないだろうか。

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