イノベーションを実現しようというAWSの断固とした決心によって、この状況は、大小にかかわらず競合企業にとってさらに厳しいものになっている。クラウドの世界の主導権を握っているAWSが2014年にリリースする新機能は、2013年の280件から増加して約500件になる見込みだ。GartnerのアナリストLydia Leong氏が書いているように、Amazonが「サービスをほぼ必ず最初に市場に出す」ので、「ほとんど全ての競合企業は、後を追い、類似サービスを出さざるを得なくなる」のである。
イノベーションだけでなく、価格でも追随しなければならない。AWSがルールを決めるとなると、それは非常に戦いにくいゲームとなる。
エンタープライズITを浸食する
しかし、このようなストレージやコンピューティングの猛烈に低い価格設定は、ハイエンドサービスの導入だけでは埋め合わせられない。エンタープライズデータウェアハウスの「Amazon Redshift」から、ハイエンドリレーショナルデータベースのAmazon Auroraまで、AWSは、エンタープライズIT業界の肥えた怠惰な保守派に対抗する新しいサービスを導入し続けている。
最近のMorgan Stanleyのアナリストレポートが指摘しているように、そうした大手既存サービスは利益が大きく、AWSはその利益を喜んでわが物にしている。
「Amazon Auroraは(中略)、Oracle(全ての《データベースの》約半分が使っている)やIBM、Microsoftのリレーショナルデータベース管理システムと直接競合する可能性がある。これは、Gartnerによれば年間250億~300億ドル規模の市場だという。MySQLはオープンソースデータベースでは先頭に立っているが、Oracleの従来型のデータベースプラットフォームには後れを取っている。Amazonは、Auroraと既存のAWSインフラストラクチャとの密な連携により、競争で優位に立てるかもしれないとみている。この連携により、企業は全ワークロードを単一プラットフォーム上で管理することができるのだ。AuroraはMySQLと互換性があり、Amazonはこの互換性によって、IT管理者がAuroraに実装を移植することが容易になると考えている。Jassy氏は、Auroraは既存のデータベースソリューションと比べて、性能は5倍、費用は10分の1の1時間0.29ドルと考えている」
そうなると、Amazonの戦略は、「採用の重大な妨げにならないくらい十分低い価格設定を続けつつ、サービスポートフォリオを速いペースで成長させる」ことに思えると、O'Grady氏は推測する。同氏はさらに、「Amazonは、顧客をできるだけ摩擦の少ない形で引き込み、そうした顧客に対して、基本的なインフラストラクチャに比べて価格に左右されづらく、また定着しやすいサービスをアップセルすることができる」と述べている。
こうしたアップセルも、先ほど述べた大手既存サービスの犠牲の上に成り立っているのであり、Googleや、新生Microsoftに影響はあまりない。
つまり、Oracleのような企業がAWSの手ごわい競争相手を自称するのが聞こえてきたら、Amazonによる価格ゼロへの競争において、保守派の大手既存サービスは対抗できないということを思い出してほしい。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。