英国ブレッチリーパークにある国立コンピューティング博物館で、世界に大きな影響を与えたコンピュータのうちの1台である「Electronic Delay Storage Automatic Calculator(EDSAC)」の復元を中心に据えた新たな展示が始まった。オリジナルのEDSACは、第2次世界大戦終了直後にケンブリッジ大学で作り上げられ、世界で最初の業務向けコンピュータである「Lyons Electronic Office(LEO)」の基礎を築いた。
EDSACの復元は、Andrew Herbert氏の率いる約20人のボランティアによっておよそ2年にわたって続けられてきており、このプロジェクトは2015年に完了する予定となっている。現時点で、訪問者の興味を引くうえで十分なレベルにまで復元が進んでいる。コンピュータ歴史家であるMartin Campbell-Kelly氏によると、コンピュータプログラミングの黎明期を象徴するマシンのプログラムを作成することに対する、若い人々への今後の動機付けになるという。
EDSACの復元されたuniselector。現代のPCではブートROMに相当する。
提供:Edsac Project
博物館のウェブサイトには「公式展示の開始時に、EDSACの重要な特徴を示すデモが実施された。Bill Purvis氏は、キーボードのなかった時代にどのようにプログラムを入力していたのかや、ディスプレイ画面が普及していなかった時代にどのように結果が出力されていたのかを説明した。またPeter Linnington氏は、コンピュータ時代が幕を開けた頃、どのようにして管状の水銀遅延線を記憶装置として用いていたのかを解説した。そしてクライマックスは、Chris Burton氏がEDSACのクロック、すなわちマシンの鼓動を刻む装置の電源を入れた時だった」と記されている。
EDSACはケンブリッジ大学の研究者のための計算処理を目的として設計され、1949年から、「EDSAC 2」に取って代わられた1958年まで使用された。EDSACのユーザーには、ノーベル賞受賞者も複数いる。英国のコンピュータ保存協会の共同創設者であるDoron Swade氏は「EDSACのおかげで科学者たちは、信頼性の高い計算能力を初めて手に入れることができた。EDSACは、第一線の実務家というユーザーを生み出したと言ってもよい」と述べている。
EDSACは、米国でJ. Presper Eckert氏やJohn Mauchley氏、John von Neumann氏といった先駆者たちからコンピュータに関する知識を学んだMaurice Wilkes卿の下で、ゼロから作り上げられたコンピュータだ。EDSACは高さが2m以上あり、3000本以上の真空管が使用されていた。またメモリはおよそ2Kバイトで、1秒間で650回の命令を実行できた。この速度は、当時の機械式計算機よりも約1500倍高速だった。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。