ドイツのSAPが25番目の業界としてスポーツ市場に参入してから1年余り、数々の取り組みが進行しており、成果も出始めている。
ブラジルで6月に開催されたW杯では、ドイツチームがSAPと共同開発したシステムでデータ分析を駆使し、チーム力を高め、優勝を果たしたことは記憶に新しい。改めて問うてみる。ITがスポーツ業界にできることは何か。
SAPでスポーツ、エンターテインメント、メディアを担当するグローバルスポンサーシップ担当バイスプレジデント、Chris Burton氏に話を聞いた。
SAPでスポーツ、エンターテインメント、メディアを担当するグローバルスポンサーシップ担当バイスプレジデント、Chris Burton氏
--2013年の「Sapphire Now」で現在CEOを務めるBill McDermott氏がスポーツ市場への拡大を発表した。現在の事業内容と組織構成は?
スポーツ、メディア、エンターテインメント業界に百人単位の社員が専業で関わっている。多くが開発だが、営業担当者もいる。ここではいくつかのカテゴリに分けて製品を提供している。
例えばスポーツでは、「人事や組織の運営」「マーケティング」「プレーヤーやチームのパフォーマンス」「ファンとのエンゲージ」の大きく4つがあり、それぞれで機能の開発を進めている。
--スポーツ分野にフォーカスする理由は?
スポーツ界は現在、変革期を迎えている。今後も(ファンにとって)意味のある存在であるためには技術が必要だ。またセンサやカメラなどからたくさんの情報を収集できるようになり、これを活用できないかという模索もはじまっている。組織運営の効率化も課題となっている。SAPはこの変革をリードしたいと思っている。
さらには、SAPの技術ストーリーを説明したり、ターゲットのオーディエンスにリーチする方法として、スポーツはすばらしい分野となる。
ブラジルW杯で優勝したサッカードイツ代表
--W杯では、ドイツ連盟そして女子テニス協会(WTA)でもCo-Innovationとして、パフォーマンス改善にデータを活用するソリューション「Match Insights」を開発した。
ドイツ連盟の例は、技術がチームのパフォーマンス改善に役立つことを実証したといえる。
ポイントは、デザインシンキングのワークショップだ。選手、コーチ、ゼネラルマネージャーの3つの「ペルソナ」を識別し、何を必要としているのかの理解を徹底的に突き詰めた。
そして、どのような情報を、どのような形で、いつ必要としているのかを割り出した。個人的には、デザインシンキングはすばらしい方法だと思っている。
WTAでもデザインシンキングを用いた。WTAには、「技術を利用して新しいオーディエンスにリーチできないか」という課題があった。コンテンツをキャプチャしてコーチ、選手、そしてファンに提供すれば、新しい世代のテニスファンにリーチできるし、テニス人口増加に役立つのではというのがアイデアだ。
そこで、選手、コーチ、ファン、メディアの4つのペルソナを設定し、担当者が14ケ月間つきっきりでニーズを理解した。その結果生まれたのがMatch Insightsだ。コートに設置されているカメラからボールの速度や落下地点などの情報を抽出してSAP HANAに送り、リアルタイムで分析する。これを視覚化ツール「Lumira」により、使いやすい形で提供する。
このほか、アメフト、乗馬などのスポーツとも話を進めており、スポーツ分野でのCo-Innovationプロジェクトは約12に達している。Co-Innovationプロジェクトは新しい業界に参入するにあたってロードマップを作る上で重要となる。WTAのMatch Insights、DFBのMatch Insightsはそれぞれのニーズに合わせたものだが、今後はこれを業界向けの標準的な製品としてロードマップを作り、他の顧客に提供する。