デジタルバリューシフト

ワークスタイル変革に適した組織になる--競争より共創 - (page 2)

林大介

2014-12-26 07:00

(1)IT・総務・人事の3つの機能を持つ

 従業員のワークスタイルを構成する要素は4つある(図1)。業務に用いるITツール、業務を遂行するためのオフィスファシリティ、業務を遂行する上でのルール、最後に業務のプロセスである。理想とする組織はこのうちの3つ、すなわちIT・総務・人事の領域をカバーすることが望ましい。

 業務のプロセスはその事業部門(Line of Business:LoB)によって異なるので一部門に統合することは不可能だ。それ以外の3つを包括的に提供する部門が理想的と考える。なぜならば、従業員の負担や不満を解消するための一手はこれらの3つの領域の問題に跨がっていることがほとんどだからだ。最善の一手のための部門間調整はできるだけ少ない方が望ましい。


図1:ワークスタイルを構成する4要素

(2)全社の経営資源(ヒト・モノ・カネ)の配分権限を持つ

 この項目は極めて重要であり、最も実現が困難な項目である。変革を推進する際、それに経営資源をどれだけドラスティックに投入できるかが成否を左右するが、セクショナリズム(部門の排他的傾向)がその動きを阻害してしまうことがある。声の大きい部門は、現在その会社の稼ぎ頭である場合があるので、影響力を無視できないケースが多いのだ。

 しかし、ワークスタイル変革を劇的に推し進めようとした場合、これらの影響は極小にしなければならない。そのためには、どんな事業部門であっても経営資源配分の権限を手放さなければならないのだ。やや中央集権的に感じられるかもしれないが、全社に関わる事柄をスピーディに進めるためには必須の取り組みである。

(3)ワークスタイル変革そのものが組織のミッションである

 組織の仮想化(バーチャル組織)や兼任といった「ソフトウェア的な」体制では、残念ながら物事がスピーディに進まない。ワークスタイル変革は本業の「ついで」に手がけるものではなく、変革そのものを「本業」として取り組む必要があるのだ。また、1度の変革がゴールではなく、常に変革し続けることがこの組織のミッションとなる。

 3つの条件を満たした「理想の組織」は、IT部門と総務部門と人事部門を合体させよという単純な話ではない。さらに言えば、この3つの条件を備えた組織を現実のものにすることは非常に困難だろう。しかしながら、理想型が分からなければ、それに近づけるための道筋も立たないのだ。次はどうやってこの理想型に近づけていくか、が論点となる。

理想型を得るためのプロセス

 どんな企業の組織にも必ず歴史や経緯があり、ワークスタイル変革のために存在する組織を既に設置している企業は少ないだろう。ここでは理想型を得るためのプロセスを紹介する(図2)が、そのプロセスを経てできた組織は企業によって大きく異なり、個性が存在するはずだ。しかしその個性はあって然るべきで、むしろ歓迎するというのが筆者のスタンスだ。ぜひ自らが所属する企業に当てはめて具体的に考察して欲しい。


図2:変革をリードする理想的な組織を得るプロセス

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