ベトナムでビジネスをする

変わりゆくベトナムの街--「CHO」から巨大モールへ

古川浩規(インフォクラスター)

2014-12-08 07:30

 月額法定最低賃金がハノイやホーチミンで150ドル程度にもかかわらず、路上では1台1000ドルから数千ドルもするバイクが洪水を起こし、当たり前のようにiPhoneやiPadといったスマートデバイスを持ち歩いているという華やかな光景はこれまでもお伝えしたところです。

 一方で、彼らも自宅に戻ると、“ハレ”の姿ではない素顔を見せるものです。今回は、こうした日常の風景の中での、「CHO」に関する話題をご紹介したいと思います。

スマホは持っているが家に洗濯機はない

 ここ数年、ベトナムの各都市は大きく様変わりし、ベトナム人の生活様式にも変化が見られるようになってきました。携帯電話の爆発的な普及やバイクの普及といった現象は日本人にも馴染みの深いものですが、家庭内においても同様のことが言えます。

 以前からテレビは普及していましたが、他の白物家電の普及率はまだまだ伸び続けています。そのため、冷蔵庫はそこそこ普及してきたものの、洗濯機がある家庭はなかなかなく、エアコンに至ってはほとんど普及していません。

 ベトナムでこれらの製品を購入することができる家庭ではハウスキーパーを雇うことができるでしょうから、ごく庶民的な一般家庭で家事を担当する家族の負担は推して知るべしとなります。

 特に都市部で生活する家庭では、現金収入を得るための共稼ぎは当たり前。そのため故郷に住んでいる親戚をハウスキーパー代わりに呼び寄せて家事をこなしてもらうことも多いようです。もしこの親戚が年頃のお嬢さんであれば、良い結婚相手を紹介してあげることで都市部でも親戚を増やし、お互いに協力しながら生活するというサイクルが自然とでき上がってきたようです。

 このような生活の中に白物家電が普及し始めているため、私の知人にも洗濯機を購入して「洗濯が楽になる!」と喜ぶベトナム人がいます。しかし、持っている携帯電話が新型のスマートフォンだったりすると、日本のように段階を追って物が増えてきた国ではなく、ある日突然いろいろなモノが氾濫し始めた国だということがよく分かります。

変わりつつある庶民の台所

日常生活にはまだまだ欠かせないベトナムの庶民的な市場、CHO。ここにさえ来れば食料品でも衣料品でも日常使う商品で手に入らないものはないと言っても言い過ぎではない。ただし、こうした市場では相場はあっても定価はないのでご注意を。
日常生活にはまだまだ欠かせないベトナムの庶民的な市場、CHO。ここにさえ来れば食料品でも衣料品でも日常使う商品で手に入らないものはないと言っても言い過ぎではない。ただし、こうした市場では相場はあっても定価はないのでご注意を。

 こうした一般的な庶民が日常の買い物に出かけるところはどんなところなのでしょうか。それは、「CHO」と呼ばれる市場です。ベトナムには、一般的にどの街でも地区ごとに存在しています。規模も大小さまざまで、主に業者向けの卸機能を持つCHOや、一般庶民が日常の買い物として買いに来る街区単位のCHOもあります。

 ベトナムの主要都市では外資系のスーパーマーケットも展開していますが、併設されているイートインに食事に出かけたり、冷蔵庫がある家庭が週末に買い出しに出かけたりといった使い方をしています。しかしスーパーマーケットが「庶民の台所」と呼べそうなのはホーチミン程度で、ハノイでもまだそこまでには至っていないような気がします。

 さてこのCHOですが、これもここ数年で大きく様変わりしています。昔ながらのCHOに一歩足を踏み入れると、慣れていない人はいろいろな意味で大きな驚きを感じることでしょう。肉、魚、野菜、生活雑貨などがCHOのあちこちに所狭しと並べられており、食料や日用品で買えないものはないというほどの品ぞろえの多さです。

 また、肉が冷蔵ケースに入れられずそのまま取り扱われていたり、魚や家禽(かきん)が生きたまま売られていたりします。そして、その買い付けをめぐって売り手と買い手が値段交渉をし、活気がみなぎっています。

 どれも現代の日本では感じることのできない光景です。当然、ベトナムを訪れる外国人観光客にとって格好のシャッターチャンスとなり、ハノイやホーチミンでは有名な観光コースにもなっています。そのため、どれだけベトナム語で値段交渉を行っても、これらのCHOでは市価よりも高い外国人価格となってしまうことが多いようです。

 一方で、外国人にはこのような日常の姿を見せるよりも、より良いベトナムの“ハレ”の姿を見せたいという声も地元では出てきているようです。また、老朽化や売り場スペースの狭隘(きょうあい)化といった現実的な問題もあり、昔ながらのCHOでは建て替えも進んでいます。

 ハノイやホーチミンでは、観光地としても有名なCHOを中心にまだ数多くのCHOが残っていますが、建て替え後の高層空間をオフィスビルとしても使用できるため、建て替えの流れを止めることはできないでしょう。建て替え後のビルの名称にも以前のCHOの名前がそのまま使われたりするため名残を感じることはできますが、古い町並みが徐々に消えていく様は少し残念な気もします。

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