縦断型のアプローチの重要性
縦断型と横断型のアプローチ
縦断型と横断型のアプローチ
ここで、1つの表を通してIT市場における代表的なキーワードをある指標で整理してみたいと思います。一番左の縦軸は、今日のITを構成するコンポーネントを階層的に並べたものです。この階層に対して、従来型のレガシー技術、そして次世代IT技術に相当するキーワードを挿入しています。
ものの見事にそれぞれのレイヤにおいて、個々の大きな技術イノベーションが起きています。日本でもこれらの技術イノベーションが名前としては既に浸透し、IT市場に影響を与えているのは明らかですが、それらに対する具体的なアプローチは日米で差が出てきているように感じます。
日本でこういった新しい技術イノベーションの導入は、1つのコンポーネントを選択し、そのコンポーネントに対する集中的に投資しているケースが目立ちます。
- 例1:企業内の業務の一部を、プライベートクラウド上に移行。業務自体には変更はなし
- 例2:企業内のデータウェアハウスシステムを、一部Hadoopに移行し、分析業務に活用する
- 例3:企業内アプリケーション開発にアジャイル型手法を採用
上記の図でいうと、「横断的アプローチ」に相当します。単一の技術を導入する方法自体には問題があるわけではありませんが、単発のプロジェクトとして終わってしまうと、得られる効果が限定的になってしまう、という問題がやはり残ってしまいます。
重要なのは、まずは図に表しているような「縦断的アプローチ」の戦略を明確にすることです。次世代IT技術の列に列挙されている技術は、今となってはお互い非常に深い相関関係を持っています。
AWS、Google、Azureの戦略
北米の3大クラウドベンダー(Amazon Web Services、Google、Azure)の各々の縦断的アプローチについて整理をしてみます。
各社ともに縦断的なアプローチをもって、サービスの提供をすでに独自のラインアップとして取りそろえています。既にIaaS、PaaSの範疇を超え、SaaS、ネットワークサービス、データベースサービス、最近ではコンテナ技術に対する取り組みなど、広くカバーすることが必須の要素になっています。
一般的には、AWSが突出してサービスの量が多い、という印象がありますが、GoogleもAzureもこの表においては同等のサービスの量と質を提供しており、3社が十分に競合できる関係にあるとうかがえます。
問題なのは、このレベルのサービスラインアップを持っているパブリッククラウドベンダーは業界にはこの3社以外には存在せず、そういう意味では、この3社は別格な地位を確立しているという解釈ができます。さらにこの上に、各社を取り巻くサードパーティやオープンソースベンダーによるエコシステムが存在し、クラウドサービスの厚い層を形成しています。
日本のクラウド市場はまだ黎明期で、やっとオンプレミスからIaaSへの移植が始まったばかりの段階です。元々のオンプレミス上の業務を純粋にAmazon EC2上への移植によって、従来かかっていたハードウェアのコストの削減、システム運用の最適化などができますが、クラウドの本来の価値を引き出すには、上記の3社が提供する他のサービスも組み合わせて利用することが大事です。