エンタープライズトレンドの読み方

“Fintech”イノベーション第2幕--ネット系プレーヤーが起こす地殻変動

飯田哲夫 (電通国際情報サービス) 2014年12月09日 08時00分

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 Accentureによれば、金融イノベーションに関連したテクノロジ投資は、グローバルベースで2008年の9億3000万ドルから2013年には29億7000万ドルへと3倍に拡大している。そして、こうした金融イノベーションに関連したテクノロジ投資を“Fintech”と呼ぶ。

 「インターネット技術の進展に伴って、Fintech投資が拡大してきたのだ」と言ってしまえばそれまでだが、その背景はそれほど平板ではない。テクノロジという観点では、オンライン取引による利便性や低価格の追求、PtoPの仕組みの導入、SNSの活用など、他の業態で取り組まれていることを金融サービス領域にも持ち込んでいるに過ぎない。

 しかし、そうした動きが加速する背景には、金融業界と消費者の関係、金融業界とネット系企業との関係、そして国の思惑がある。

Fintechイノベーションの第1幕

 そもそも、最初のFintechブームの始まりは2008年に発生したリーマンショックである。ウォール街をデモ隊が占拠し、1%の富裕層ではなく、99%の一般市民を向いたサービスが求められ、それに応えて多くの金融ベンチャーが誕生した。つまり、金融業界に対する失望と怒りが、Fintechイノベーションの強い動機となったのだ。

 ソーシャル家計簿サービスは、利用者同士が家計情報を共有することで、金融機関の言いなりにならないための知恵を生み出した。PtoPレンディングは、金融機関を経由せずに低コストで資金を融通し合う仕組みを提供した。

 しかしながら、こうしたオルタナティブな金融サービスは、一定の存在感を示しつつも、既存の大手金融機関を脅かすには至らなかった。

Fintechイノベーションの第2幕

 そして、2011年頃からGoogle、Apple、Amazonなど大手ネット系プレーヤーが決済サービスへ参入する。2011年にGoogleはウォレットサービスに参入し、2014年にはAmazonがモバイル決済サービスに、AppleもApple Payによるウォレットサービスに参入する。消費者に大きな影響力を持つネット系プレーヤーの金融サービスへの参入は、大手金融機関の行動に変化をもたらした。

 Appleが決済サービスに参入した2014年、大手金融機関の動きは明らかにこれまでとは異なるものだった。その特徴的な動きは、新しい金融サービス創出のためのラボの設立、金融ベンチャーへの投資、そして、ハッカソンやAPIの公開などを通じた金融ベンチャーとのコラボレーションである。

 JPMorgan Chaseは、2013年末に“Digital Customer Experience”ユニットの設立を宣言し、そこではプロトタイピングの手法を活用しながら、年間3つ以上のサービス開発に取り組むとした。金融ベンチャーを対象とする投資ファンドを組成した金融機関にはBBVA、HSBC、Santanderがあるほか、Citibank、VISA、American ExpressなどがFintechベンチャーへの投資を活発に行った。

Fintechイノベーションのこれから

 金融機関への失望から始まったFintechイノベーションは、大手ネット系プレーヤーの参入を受けて、ベンチャーキャピタルのみならず、金融機関自らが支援の主体となり始めている。ただ、いずれにしても、その中心的存在は、テクノロジを駆使してユーザー視点のサービスを生み出し続けるFintechベンチャーの存在である。

 近年では、各国政府も金融イノベーションの活性化に取り組んでいる。米国は2012年に「Jumpstart Our Business Startups Act」(JOBS法)を成立させ、クラウドファンディングを資金調達に活用できる枠組みを作り上げ、英国はPtoPレンディングを中小企業支援に活用している。特に英国では、Fintechを金融センターとしての競争力の源泉と位置づけ、政府が金融ベンチャーを積極的に支援している。

 いよいよ、金融イノベーションは、企業レベルの取り組みから、都市あるいは国というレベルでの取り組みへと発展しつつある。いかにベンチャーから始まる金融イノベーションが、持続力のあるサービスへ昇華していくか、このエコシステムの有無が金融センターとしての競争力の差となるだろう。

 日本においてもFintech領域の活動は、ベンチャー、金融機関、政策とそれぞれのレベルで温度が高まっている。金融サービスは、生活者や企業を活性化させる触媒であることを考えれば、そのイノベーションの有り様も、その社会が置かれた状況によって変わってくる。つまり、日本には日本のFintechシーンが必要だ。

 今年度も2015年2月26日に電通国際情報サービス(ISID)主催のFintehイベント「FIBC2015」が開催される。12月2日から登壇企業の募集が始まっているので、関心のある方は是非見てみてほしい。

飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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