大河原克行のエンプラ徒然

9カ国51人がデザイン、3週間でMVP完成--クラウドソーシング「Topcoder」の実際

大河原克行 2014年12月10日 18時52分

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 アピリオは、同社が運営するクラウドソーシングコミュニティ「Topcoder」を利用したモバイルアプリの開発事例を公開した。

 2013年に米Appirioが買収したTopcoderは、2001年からサービスを開始したクラウドソーシングサービス。現在、全世界で71万人以上の技術者が参加している。ユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)のデザイン、ソフトウェア開発、データサイエンスの3つの領域でコンテスト方式でクラウドソーシング環境を提供している。

 結果に対する支払方式であることから、競争原理で品質を担保しているという。開始当初からエンタープライズ向けソフトウェアに特化した開発コミュニティとしていることが特徴だ。プロジェクトマネジメント、開発、クオリティコントロールの3つのリソースを提供できる唯一のクラウドソーシングとも位置付けられている。

36時間のデザインコンテスト

 今回公開したモバイルアプリの開発事例は、10月28~30日に開催されたイベント「Gartner Symposium ITxpo 2014」で「イベント管理モバイルアプリ」のデザインをテーマに36時間のライブデザインコンテストを実施。それをもとに、最低限の機能を搭載した“Minimum Viable Product(MVP)”として完成させた。

藤田純氏
アピリオ 代表取締役社長 藤田純氏

 「これは、Topcoderが提供する“デザイン駆動アプローチ”によるもの。topcorderが持つデザイン能力を最大限に活用。数多くのデザイン候補から、最も完成度が高いと判断したものを選択し、それをベースにアプリケーションを開発できる」(アピリオ代表取締役社長の藤田純氏)

 ライブデザインコンテストは、会期初日の10月28日午後8時からスタート。最優秀に選ばれた開発者には1800ドルの賞金をはじめ、総額8000ドルの賞金をアピリオが用意して、全世界のTopcoderコミュニティに向けて募集を開始した。「36時間と募集期間が短いことから、賞金は高めに設定した」(藤田氏)

 デザインのための要件としてイベントの参加者を対象にアンケートを実施。「休暇が取れたらどこに行きますか」という質問からビーチリゾートとの回答が多かったことから、デザインのトーンはリラックス。「秋に楽しみにしているものは何ですか」との質問からサンマとの答えが多かったため、青を基調としたイメージに。さらに「乗りたい車はどれですか」との質問ではLand Roverが多かったことからロゴデザインは「堅牢な雰囲気」といった要件を設定した。

 その結果、インドネシア、タイ、ルーマニア、ペルー、ポーランド、フィリピン、インド、米国、中国の9カ国から51人のTopcoderコミュニティに参加する開発者が45の異なるデザインを開発した。

 アピリオでは、それらからひとつのデザインを選び、プロトタイプの開発を進めた。ここでは、Appleが開発したプログラミング言語「Swift」を使用して、再びTopcoderコミュニティを対象にコンテストを実施。4000ドルを賞金として用意した。ここでは、コンテスト開始から成果物のサブミットまでを5日間、その後の7日間で成果物を最終化させるという募集内容になった。

 「アピリオには、Swiftに精通した技術者がいない。だが、それでもコンテストを実施することでSwiftベースのアプリを開発できる。しかも、短期間に開発できた」とTopcoderの活用メリットを示す。そこから社内のリソースを活用して、バックオフィスのシステムと連携。わずか3週間でMVPを完成させた。

MY EVENT FINDER
MY EVENT FINDER

 完成したモバイルアプリは「MY EVENT FINDER」と呼ばれ、今回はライブコンテストのためのアプリとしており、発売などは予定していない。だが、今後は社内での活用なども検討していくという。

 「日本では、まだ効果的なクラウドソーシングの利用が進んでいない。クラウドソーシングを通じて、どこまでモバイルアプリが作れるのかと疑心暗鬼に思っている人たちも多い。Topcoderでは、世界最高峰の頭脳を活用して、高付加価値の開発体制を実現できる。われわれ自身がコンテストを開催して、クラウドソーシングの活用メリットを訴求していく必要がある」(藤田氏)

 クラウドソーシングの開発案件をどこでどう切り分けて、アジャイルな手法で短期間に効率的に開発するためのノウハウも求められるだろうが、こうした点に関しては、アピリオ内部にいるコンサルタントのノウハウを活用できるという。

 今回のコンテストに日本人開発者が参加していなかったことも、藤田氏は残念がる。「UI/UXの領域は、Topcoderでも日本の開発者が活躍している分野。日本法人が開催するコンテストでも、ぜひ日本からの参加が増えることを期待している」

コンポーネント駆動アプローチも採用

 Topcoderの価値向上やメリットの訴求に向けて、アピリオではSalesforce.comの新たなモバイルアプリ向けPaaS「Salesforce1 Lightning」向けの部品モジュールの開発コンテストにも力を注いでいる。

 これは、デザイン駆動アプローチと並んで、Topcoderのもうひとつの開発アプローチ手法である“コンポーネント駆動アプローチ”に通じるものとなる。

 コンポーネント駆動アプローチでは、必要に応じて継続可能なコンポーネントとしてTopcoderで開発。Lightningなどのフレームワークを利用して、拡張が容易な社内向けアプリを開発するという仕組みになる。

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