HPがエンタープライズサーバの新製品投入に伴い、ミッションクリティカル市場を新定義した。今後の方向性を示唆するものといえそうだ。
ミッションクリティカル市場を2つに分類
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が12月9日、ミッションクリティカル用途に適したエンタープライズサーバ「Superdome」の新機種として、x86プロセッサおよびLinux OSベースの「HP Integrity Superdome X」を発表した。HPが以前から「DragonHawk」というコード名で開発を進めていたものである。
HP Integrity Superdome Xは、x86サーバとして最高レベルの信頼性と可用性を実装し、ミッションクリティカル環境の新しいワークロードをリアルタイムでサポートできるようにしたというのが触れ込みだ。一般的なx86サーバと比較して20倍の信頼性とダウンタイムを60%削減。競合するUNIX環境と比較してTCOを32%削減できるとしている。
詳細な仕様については、同社の公開情報や関連記事を参照いただくとして、ここでは「ミッションクリティカル環境の新しいワークロード」に対応したという点に注目したい。これはすなわち、HPがミッションクリティカル市場を新しく定義したことを意味するからだ。
では、どう新定義したのか。発表会見で説明に立った日本HP執行役員HPサーバー事業統括本部事業統括本部長の手島主税氏および米HPエンタープライズサーバービジネス バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのRic Lewis氏によると、HPではミッションクリティカル市場を「従来からのミッションクリティカル」と「新たなミッションクリティカル」の2つの領域に分けて考えたという。
HP Integrity Superdome Xを紹介する日本HP執行役員の手島主税氏(左)と米HPバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのRic Lewis氏
新たなミッションクリティカル領域が最大の激戦区に
従来からのミッションクリティカルというのは、統合基幹業務システム(ERP)や顧客関係管理(CRM)などの「従来からの基幹業務」や、金融や通信インフラなどの「特定業界のサービス基盤」といった領域だ。これらは「これからも企業を支え続けるが、ワークロードとして増大していく領域ではない」という。この領域で従来から利用されてきたのが、HPの製品でいうと、ItaniumプロセッサおよびHP-UXベースの「HP Integrity Superdome 2」である。
一方、新たなミッションクリティカルというのは、クラウド、セキュリティ、モビリティ、ビッグデータといったメガトレンドのもとで、多様なデータをリアルタイムに活用していくことが求められる領域だ。こちらは「これから企業が成長する新たな原動力となり、ワークロードも急速に増大していく」との見立てだ。今回の新製品であるHP Integrity Superdome Xは、まさしくこの領域に向けたものである。
HPによると、新たなミッションクリティカル領域で利用するサーバには、「大量のデータ処理や分析が行える異次元の性能」「可用性を追求した圧倒的な信頼性」「さまざまなワークロードに対応できるオープン性」の3つが求められるとしている。
確かに、メガトレンドによるワークロードは、今後ミッションクリティカルな領域に入っていく可能性が高い。今後はHPが言うように、ミッションクリティカル市場を2つに分けてとらえるべきだろう。
ただ、新たなミッションクリティカル領域が、ICT市場で最大の激戦区になるのは間違いない。「HP Integrity Superdome Xは競合製品と比較して、新たなミッションクリティカル領域で求められる3つのニーズにおいて圧倒的にリードしている」(手島氏)と意気込むHPだが、これからこのクラスのサーバの熾烈な開発競争が繰り広げられることになりそうだ。それとともに、新たなミッションクリティカル領域のプラットフォームがどのように形成されていくのか、注目しておきたい。