前述の通り、農業は労働集約産業であり、日本では高齢化が進んでいる。そこで、考えられるのは、作付けから肥やり・間引きといった育成管理、そして収穫までロボット化することである。
先に「知識集約産業からデータ集約産業へ」という産業構造の変化について述べたが、もうひとつの流れである「労働集約産業から設備集約産業へ」という変遷を活用するのである。
農機の世界にも技術革新があることは認識しているが、あくまでも人が運転、操縦することが前提といえよう。これを産業用ロボットの活用が進んでいる組立製造業のようにするのである。幸いなことに、日本は産業用ロボットについては国際的な競争優位性を有しており、これをICTと結びつけて農業の産業成長を促そう、ということである。
遠隔地で自動で作られた農作物が、都会の消費地に運ばれる。その間のトレーサビリティもICTの活用で確保できる。安心・安全な食の確保と就農人口の高齢化を解決するには最適だと思うのであるが、いかがだろうか?
また、さらに進めて消費地に近いところで小規模な植物工場、あるいは消費者そのものが生産できるようなミニ工場、そういう自律分散システムを農作物の栽培に取り入れるという夢のようなアイデアは一考に価しないであろうか。
- 菊地 泰敏
- ローランド・ベルガー パートナー
- 大阪大学基礎工学部情報工学科卒業、同大学院修士課程修了 東京工業大学MOT(技術経営修士)。国際デジタル通信株式会社、米国系戦略コンサルティング・ファームを経て、ローランド・ベルガーに参画。通信、電機、IT、電力および製薬業界を中心に、事業戦略立案、新規事業開発、商品・サービス開発、研究開発マネジメント、業務プロセス設計、組織構造改革に豊富な経験を持つ。また、多くのM&AやPMIプロジェクトを推進。グロービス経営大学院客員准教授(マーケティング・経営戦略基礎およびオペレーション戦略を担当)