SAPジャパンは12月9日、インメモリに最適化されたロジックとデータ構造を持つ次世代アプリケーション群「s-innovations」に第1弾製品「SAP Simple Finance」の提供を開始した。
s-innovationsはインメモリデータベースの「SAP HANA」ネイティブに開発された。第1弾としてSimple Financeを提供し、今後は既存の統合基幹業務システム(ERP)パッケージ群をs-innovationsで置き換えていくことを計画している。
Simple Financeは単一データソース、業務のリアルタイム化の促進、迅速な予測・分析を実現し、「結果の積み上げを報告することにとどまらず、これから起きることを予測する資金需要予測を実現できる」と説明している。価格は未公表だが、2015年に100本以上の販売を目標としている。
SAPジャパン バイスプレジデント ソリューション&イノベーション統括本部長 堀田徹哉氏
SAPジャパン IVE&ソリューション本部 クラウド/アプリケーションソリューションズ 経営管理ソリューションズ ディレクター 佐々木直人氏
SAPジャパン ソリューション&イノベーション統括本部 アナリティクスソリューション本部 部長 中田淳氏
データ構造が簡潔なERP
s-innovationsは「今回のSimple Financeを第1弾として、順次製品を提供し、次世代ERPとして現行製品を全て置き換えていく」とバイスプレジデント ソリューション&イノベーション統括本部長 堀田徹哉氏は説明する。現行のERPパッケージは「保守期限を延長し、2025年を保守期限」となっていることから、ひとつの目途として今後10年、さらに競合との関係をにらみながら、順次置き換えを進めていくことを計画している。
HANAネイティブであることから、データ構造が簡潔となり、データボリュームの削減、分析やビューの自由度が大幅に向上することから、ビジネスモデルから業務プロセス、プラットフォーム、インフラなど大幅な影響を及ぼすとSAP側ではアピールしている。
Simple Financeは会計機能のほかにグループ資金管理のための新機能、ERPに統合された新しい財務計画機能をもつ。ERPパッケージ「SAP ERP」をHANA上で動かす“powered by SAP HANA”によって新規ユーザーだけでなく、既存のSAP ERPユーザーも利用できる。製品の特長は以下の3つになる。
- 単一データソースで財務会計と管理会計が整合した一元的なデータ活用が可能で、任意の切り口でのオンデマンドな集計、分析、オペレーショナルデータをリアルタイムに分析、グループ共通の会計データ基盤として利用などが可能
- 業務のリアルタイム化を促進し、決算早期化、資金予測の即時化、不正会計の即時化などを実現
- 迅速な予測や分析を実現する、実績データをそのまま活用した業績予測や資金繰り予測を即座に実施することが可能
「カバーする業務範囲としては、アカウンティング&決算業務管理に加え、予算、予測、計画管理と財務分析、財務資金・財務リスク管理、コラボレーティブファイナンスオペレーション、エンタープライズリスク&コンプライアンス管理という計5つの業務範囲となる」(IVE&ソリューション本部 クラウド/アプリケーションソリューションズ 経営管理ソリューションズ ディレクター 佐々木直人氏)
Simple FinanceはすでにSAPグループが導入しているという。ソリューション&イノベーション統括本部 アナリティクスソリューション本部長の中田淳氏が説明した。
「組織変更を反映する場合、従来のテーブルをいろいろ持ったERPの構造では集約やバッチ処理、レポート確認という工程が必要で約1週間かかっていたが、オンザフライでのシミュレーションへと簡素化され、1日程度で反映できるようになった。月末締めの処理時間も中間テーブルが存在する従来構造では不可能だった、内部取引照合などを順次実施することで処理時間が420時間削減。債権回収部門によるアクションが、リアルタイムKPIから個別明細のモニタリング、随時やり取りと進化し、売上債権回転日数が10%削減した」
価格については明らかにしていないが、販売形態はオンプレミス、クラウドとしてIaaS型、PaaS型、SaaS型の4種類の販売モデルを提供する。