日本IBMは12月15日、PaaS「IBM Bluemix」をシングルテナント環境で提供する「IBM Bluemix Dedicated」を発表。エンタープライズ環境でのBluemixの有効利用を支援する施設として「エンタープライズBluemixセンター」をIBM東京ラボラトリー内に新設するなど、Bluemixの新たな戦略を説明した。
Bluemixは、IaaS「SoftLayer」を基盤としたPaaS。2月からベータ版を提供。6月からは正式サービスを開始してきた。
日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業担当 Vivek Mahajan氏
日本IBM ソフトウェア事業本部 クラウド・プラットフォーム・サービス事業部 事業部長 高瀬正子氏
ソフトウェア事業担当専務執行役員のVivek Mahajan氏は、「これまでにBluemix Challengeと呼ぶコンテストを開催、AppleやMicrosoft、Twitterとの提携。クレジット決済の開始、Watsonサービスの開始や起業家向け特別プログラムの発表などを行ってきた。今後のPaaSで重要なサービスに位置付けられるものになる」とコメントした。
ソフトウェア事業本部クラウド・プラットフォーム・サービス事業部長の高瀬正子氏は「現在、IBMやパートナー企業を通じて、約80のAPIを提供。2月時点では、約30のAPIだったものが急激に増加している。従来のソフトウェア製品が3年かかっている進化がわずか半年間で進んでいる」などとした。
「プライベートAPIカタログ」も提供
新たに提供するBluemix Dedicatedは、ユーザー企業専用のシングルテナント環境を提供することで、高いセキュリティ環境を実現するとともに各種規制やコンプライアンスに対応。仮想専用網(VPN)経由をはじめとするネットワークに直接接続することで自社環境と同じように利用することができるのが特徴だ。
北米や英国のデータセンターのほか、12月から稼働する国内のデータセンターの利用も可能で、性能やスケーラビリティの予測に基づいて、リソースの柔軟な増減が可能であり、計画性の実現やコントロールが可能になるという。IBMが基盤やサービスの運用を管理することから、ユーザー企業はアプリケーションやサービスの構築に注力できるほか、契約から3日間で環境を提供できるとしている。
価格は、基本パックが月額約400万円。同パックの初期契約期間は1年間となる。基本パックには、VPN接続や選択したデータセンターでのBluemixの提供、標準的な技術サポートなどが含まれる。リソースの増強などにあわせて料金が変動する。
同社ではマルチテナントのBluemix向けに「プライベートAPIカタログ」の提供も開始する。Bluemixを安全に接続するCloud Integrationサービスを新たに追加。これにより、オンプレミス上のアプリケーション機能やデータと連携できるようになる。Bluemixのカタログ上に専用のアイコンを追加し、他のサービスと同様に利用できるようにするという。
コンテナサービス「Docker」にも対応する。Bluemixで提供するサービスに限定されず、より自由度の高い開発環境を実現。エンタープライズ独自の開発フレームワークや固有の環境に依存したアプリを開発、稼働させられる。
高瀬氏は「これまではBluemixはパブリッククラウド上でのみ利用できたが、一部の顧客から専用エリアで使えるBluemixが欲しいという声が高まっていた。これは日本だけでなく、グローバルで上がっていた要望である。社内や特定の顧客だけで利用する場合やハイブリッドクラウドの選択肢を提供する点でも意味がある」と説明した。
「Dockerはこんなに早いタイミングで出す計画ではなかった。市場ニーズがDockerを求めており、それに対応したものである。IBMはそうしたニーズにも柔軟に対応していく」(高瀬氏)
Bluemixで“CAMSS”に対応
2015年第1四半期(1~3月)から稼働する予定のエンタープライズBluemixセンターは、全世界のBluemixの技術部隊と連携してIBM東京ラボラトリーの専門家が担当。セキュリティやコンプライアンス、導入、展開などでの課題解決支援を行う施設になる。Bluemixに関する機能拡張や技術的協業などに関する相談窓口としての役割も果たすことになる。
日本IBM 執行役員 研究開発担当 久世和資氏
日本IBM 研究開発担当執行役員の久世和資氏は、「CAMSS(クラウド、アナリティクス、モバイル、ソーシャル、セキュリティ)を利用した新たなアプリやサービスを迅速にデータセンター上で動かしたいというニーズに応えられる。エンタープライズでの本格的な利用を支援することができる」とした。
Mahajan氏は「日本の顧客からはシステム展開での柔軟性が求められており、これはクラウドでも同様である。エンタープライズでのイノベーションを加速するためには、パブリッククラウド、プライベートクラウドとともにハイブリッドクラウドの選択肢を提供する必要がある。ここにIBMの価値がある」ことを強調した。
「Bluemixは、この半年間で開発体制、営業体制ともに強化してきた。今回のBluemix Dedicatedの提供は、ハイブリッドクラウド環境での利用を実現するという点でも効果がある。Bluemixは、これからも進化を続けることになる」とMahajan氏はBluemixの強みを強調した。
高瀬氏は「日本IBMのソフトウェアやミドルウェアは、Bluemix上で拡張しており、これは顧客のハードウェア、ソフトウェア環境の拡大につながっている。12月には、Cloud Foundry Foundationを設立し、Bluemixに多くの人が参加して、多くのAPIを利用できる環境が整った。スピードがさらに速まり、無限に広がる環境が整った。Bluemixは今後半年もさらに大きな進化を遂げることなる」と語った。