サーバOS「Windows Server 2003」のサポート終了まで7カ月を切った。提供元のマイクロソフトをはじめ、関連ベンダーや行政も移行対策に注力しているが、影響が懸念される。そこでユーザーに一言。クラウド活用をぜひ検討してみてはいかがか。
業界を挙げて最新環境への移行を促進
代表執行役社長 樋口泰行氏
「建物で言うと、耐震構造に難点がある古いものから最新基準に則った新しいものに移り変わるのと同じこと。ITシステムも時期が来れば、新しいものに移行していただきたい」
日本マイクロソフトの樋口泰行代表は先頃、同社が開いたWindows Server 2003サポート終了に関する記者説明会でこう説明した。会見では、Windows Server 2003のサポートが2015年7月15日に終了することを受け、パートナー企業や経済産業省とともにさまざまな対策を打ち出し、ユーザーに対して最新環境への移行を強く呼びかけた。
サポートが終了すると、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなり、セキュリティ上、非常に危険な状態となることから、Windows Server 2003サーバを使用中のユーザーは最新環境へ移行する必要がある。
樋口氏はIDC Japanの調査結果をもとに、Windows Server 2003サーバの国内での利用状況について説明した。それによると、2014年末時点で稼働中のWindows Server 2003サーバは約21万台の見通しだ。
日本マイクロソフトや関連ベンダーによる今年初からの移行促進活動に伴い、この1年で15万台ほど減少したが、それでも現在稼働中の全PCサーバの8.8%を占める台数が残っているという。残り7カ月足らずでこの台数を極力減らさないと、相当数の企業システムの安全性が脅かされることになる。
移行を契機にクラウド化を進めるユーザーメリット
注意すべきなのは、これまでと同じオンプレミス環境で最新サーバへ移行するとなると、相当の時間がかかることを予め踏まえておかなければならない点だ。
移行作業は通常、計画、予算確保、発注、導入・構築、動作確認、試験運用、そして本番運用というステップを踏むが、これら全てにかかる時間は数カ月から、場合によっては1年を要することもある。その意味では、まさしくタイムリミットが迫っている火急の課題なのである。
そこでユーザーに提案したいのは、これを契機にクラウド活用を検討してみてはいかがか、ということだ。例えば、日本マイクロソフトはパブリッククラウドサービス「Microsoft Azure」を活用したケースとして、「最新サーバとAzureを組み合わせたファイルのバックアップ」「最新サーバとAzureを組み合わせたBCP対策」、そして「最新サーバ環境のAzureへの全面移行」といった3つのパターンを提案している。
とくに、移行を契機にシステムを刷新するのならば、クラウド化を進めたほうが短時間で作業が可能であり、コストも軽減できる可能性がある。
ただ、こんな調査結果もある。一般社団法人 日本コンピュータシステム販売店協会が中堅・中小企業を対象に、Windows Server 2003サポート終了に伴うクラウドの活用についての懸念点を聞いたところ、「データを第三者に預けることで、セキュリティの心配がある」「長期にわたって利用すると、自社運用と比較してコストメリットがない」「業務に合うクラウドサービスがない」「クラウドサービスの価格やサービス内容があいまいで比較検討が難しい」といった回答の割合が高かったという。
こうした点については、ベンダー側に一層わかりやすく丁寧な説明を求めたい。一方でユーザーとしては、最新サーバを導入するにせよ、クラウドを全面あるいは一部利用するにせよ、この移行を契機にITを経営戦略に有効活用できるようにしたいところだ。そのためにもぜひ早急にアクションを起こしていただきたい。