第3のプラットフォームの成長は続く
2014年度の国内ICT市場が前年比0.1%増であるのに対し、通信サービスを加えた、2015年の国内ICT市場の成長率は、1.7%減と予測している。2014年前半まで続いていたWindows XPのサポート終了に伴うPCの更新需要増の反動減を予想した。2013年まで2桁の成長率で市場をけん引してきた移動体データ通信サービス市場も、2015年にマイナス成長に転じる。
2013~2018年 国内ICT市場 第3のプラットフォーム/第2のプラットフォーム別 支出額予測
2013~2018年の年平均成長率(CAGR)では、メインフレームやクライアント/サーバ(C/S)が中心となる第2のプラットフォーム市場は2.9%減であるのに対し、第3のプラットフォーム市場は4.3%増と市場をけん引すると予測する。2015年の第3のプラットフォーム市場の成長率は、4.6%増であり、第2のプラットフォーム市場は3.9%減とした。
「第2のプラットフォームが減速し、第3のプラットフォームが伸びるのは世界的なトレンド。x86サーバでメインフレームと同じような堅牢なシステムができ、同じようなシステムがクラウドやLinuxでもできると考える企業が増えている」 (中村氏)
エンタープライズモビリティの試用期間は終了し導入効果が厳しく問われる
2015年のモビリティは、スマートフォンの加入者数が家庭市場で前年比4.1%増、タブレットでは前年比6.6%減と伸び悩む。
エンタープライズモビリティ市場については、スマートフォンの業務活用や、タブレットの産業特化型サービスを伴った導入による生産性の向上が図られており、さらなる市場拡大に対する期待は高い。
IDCでは、2015年のスマートフォンの法人市場の出荷台数は前年比26.1%増、タブレットの法人市場での出荷台数は前年比23.5%増と予測している。
モバイル市場が継続的に成長するためには、例えば統合基幹業務システム(ERP)をスマートフォンから操作できるなど、既存の業務プロセスがモバイルに最適化され、生産性や業務効率の向上につながる製品やサービスが提供される必要があるとした。
ウェアラブルに関してはメガネ型端末をトンネルやプラント、通信基地局などの新設工事や 保守点検に使うケースや、ヘルメットにカメラをつけて保守点検するような製品やサービスが展開され、その場でタブレットに点検後の数値を入力するなど、仕事の流れを変えるものが出てきたとしている。
また、Appleが2015年初頭に予定している「Apple Watch」とそのエコシステムの形成がユーザーの課題解決にどれだけ寄与するかが市場に対して重要とした。
クラウドネイティブ時代の幕開け
ERP(同社は“Enterprise Resource Management:ERM”と呼ぶ)などの業務アプリケーション領域でもベンダーによるクラウドネイティブ化が本格化するとIDCはみている。また、クラウドネイティブのアプリケーションは製品が有する機能に加え、外部サービスとの連携やアドオン開発が容易となる。
クラウドネイティブのアプリケーションでは、自律性を有した機能がサービス化され、他サービスとの連携、セキュリティ、ガバナンス管理やアドオン開発を容易とするPaaS、サービスカタログ、マーケットプレイスの整備が進むとした。
連携、拡張可能なサービスには、ソーシャル技術、ビッグデータ/アナリティクスが含まれる。この動向は、多様化されたアプリケーション内外のサービス(機能やデータ)を、ビジネス指標に従って組み合わせる、新しい業務アプリケーションのフレームワークを生み出すことになるという。
この新しい業務アプリケーションは業務アプリケーションは俊敏性や柔軟性、連携性が備わるとともに、将来的には、業務担当者が変化する市場環境にあわせてユーザーエクスペリエンスやワークフローを反映させることが可能な開発環境を構築する。この時、既存アーキテクチャの業務アプリケーションは競争力を失い、淘汰に向かうとした。
2015年は、クラウドネイティブ時代の幕開けの年であり、ユーザー支出が急速に変化するわけでないが、「産業特化型ソリューション」が成長のための必要な施策と位置付けている。
「セキュリティが心配だからサーバをクラウドにするというケースが増えてきたと感じる。自社で抱えている人材では攻撃が防げないためだ。大手クラウドベンダーは日本に2つ以上のデータセンターを抱えているところも多く、災害復旧(DR)の観点からもミッションクリティカルな領域で積極的にクラウドを利用するケースが増えてきた」(中村氏)