マネジメントのレベルを段階的に上げる
データセンターが抱える具体的な課題をとらえ、改善効果の大きさなどを考慮して優先順位をつけながら、運用の自動化や最適な改善計画の立案、データセンターの設計と構築、運用の改善などに臨む。そのためにはIT機器と設備の両方を統合管理するDCIMによって、単位時間当たりの電力消費量や、IT機器や設備の構成、データセンター内の温度分布などを可視化・分析する必要がある。
ただし、DCIMに取り組む世界各国の企業のプロジェクトを見る限り、可視化が十分に果たせていない状態から、一朝一夕に自動化や最適な改善計画を立案できるようになるほどDCIMは容易ではない。多くの企業はマネジメントの現状のレベルを確認したうえで、DCIM用のシステムを導入して可視化の仕組みを整え、一段ずつマネジメントのレベルを高めながら自動化を推し進めてIT部門の負荷軽減などの効果を手に入れている。
現状のマネジメントのレベルを把握するための参考に、DCIMの動向に詳しい米国のリサーチ会社、The 451 GroupによるDCIMの成熟モデルを紹介する。先に答えをいうと、5段階のレベルのうちレベル2とレベル3との間に大きな隔たりがあり、レベル3に達している企業は少ない。
レベル1:基礎
機器や設備の基本的なモニタリングや正常な稼働の確認はできるが、IT機器や設備の情報を統合管理できていない。世界中のデータセンターの95%が、このレベルのマネジメントを実践できているといわれている。
レベル2:受動的
電力消費量をモニタリングするためのツールを導入するなどして、必要に応じたデータセンターの冷却制御を実現している。現時点で、およそ80%のデータセンターが、このレベルに達しているとされる。
レベル3:能動的
データセンターを構成するIT機器や設備の性能や配置場所、運用状況を把握し、電力使用量の無駄低減や、二酸化炭素排出量の低減など環境性能の向上などを果たしている。この段階に到達しているデータセンターは30%程度といわれる。
レベル4:最適化
IT機器や設備を管理する複数のシステムが統合され、収集したデータを将来の稼働状況の予測や、リアルタイムでの設備稼働制御に役立てられている。ここまで実践できているデータセンターは、まだ5%しかないとされる。
レベル5:自動的かつ自己最適化
IT機器や設備の統合管理システムによってデータセンター全体の動きを把握し、空調制御のために設けたルールや求められるサービス要件に応じて自動的にデータセンターの稼働を調整している。これがDCIMのゴールだが、実現済みのデータセンターは現時点ではほぼないとみられている。
次回は、レベル3やレベル4に達した暁に得られる効果を共有すべく、DCIM用のシステムを使ってデータセンターのライフサイクルにおけるOperation(運用)で収集した多種多量の情報を、さまざまな改善に役立てる方法を見ていく。