新たなデータセンターのマネジメント術として世界各国で注目を集め始めた「DCIM(Data Center Infrastructure Management)」。前々回、前回はその代表的な機能の概要や、DCIMによるマネジメントのレベルについて紹介した。最終回となる今回はDCIMを用いることで可能になる可視化の具体例と、数々の効用を解説していく。
IT機器や設備の過剰な投資を抑え、かつ電力消費量の増加を抑制しながら、データセンターを身の丈に合うように継続的に成長させていく。その成否のカギは、どれだけ詳しくデータセンター全体の状況を可視化できるかによって決まる。そう言っても過言ではない。
サーバのCPUやメモリの使用率は業務処理量によって時々刻々と変化する。日々新たに発生する業務処理は大量のデータを生み出し、ストレージの容量を消費していく。一方、室温を一定に保つために空調が自動的に風量や温度を調整したり、サーバやネットワーク機器の稼働状況に応じて、ラックに搭載した電源タップであるPDU(Power Distribution Unit)がIT機器への配電を制御したりする。
のっけからやや細かい話になるが、DCIM(Data Center Infrastructure Management)システムは、IT機器の監視用に一般に用いられる通信プロトコル「SNMP(Simple Network Management Protocol)」や、「Modbus TCP」と呼ぶ設備制御の汎用的な通信プロトコルを使って、IT機器と設備の両方からデータを収集できる。IT機器と設備のそれぞれを管理する既存システムと連動して、各管理システムからデータを取り込む機能も併せ持つ。
そのため、サーバの稼働状況から空調や室温の状態、PDUの配電状況やUPS(無停電電源装置)の蓄電容量にいたるまで、ありとあらゆる情報を一元管理することが可能になっている。
以下では、シュナイダーエレクトリックのDCIMソフト「StruxureWare Data Center」を例に、DCIMシステムによるデータセンターの現状可視化の実イメージと、収集したIT機器や設備の情報の具体的な応用例をみていく。
配置図やグラフを用いて直感的に現状を把握
「三現主義」を掲げる製造業では、製品や工場の品質管理や作業の質および効率を高め続けるため、「現場」「現物」「現実」の徹底把握を当たり前のように実践している。データセンターでは、三現主義において最前線にいる担当者が果たすべき機能、すなわちIT部門に求められる可視化の役割をDCIMシステムが一手に担う。
DCIMシステムの最大の特徴ともいえるのが、データセンターの現状を直感的に把握できるようにする機能だ。下の画面を見てほしい。画面右にデータセンターの全体レイアウトを、画面中央にデータセンター内の特定のラックの状態を表示したものである。IT部門の担当者はこの画面から、ラックの空きユニットの所在やラックごとのリアルタイムの電源容量をひと目で把握できる。
この画面を上に示したようなデータセンターのレイアウトを、忠実に再現する支援機能もDCIMシステムは備えている。StruxureWare Data Centerの場合であれば、寸法や最大消費電力などのカタログスペックを収録した4万2000種類以上のIT機器や設備のデータベースを用意している。
IT部門の担当者は、自社のデータセンターで使用している複数のベンダーのIT機器や設備の型番をマウスで選択し、ドラッグ&ドロップ操作で容易にレイアウトを作成できる。
もちろん、過去から現在の任意のタイミングや期間を指定し、データセンター全体の電力消費量を直感的にとらえることも可能だ。DCIMシステムはIT機器だけでなく、空調や電源装置、照明などの設備を含め、データセンターが消費している電力量を実測値で管理しているからである。
そして測定したデータから、データセンターの環境性能を表す世界共通の指標である「PUE(Power Usage Effectiveness)」、あるいは「DCiE(Data Center Infrastructure Efficiency)」の値を自動的に算出。その結果を下の画面にあるようにグラフ表示する。