Yahoo Techについても、同分野で先行するCNETやGizmodoにはまったく歯が立たず(5月のアクセスユーザー数が900万というから米国の一般向け媒体としてはかなり少ない印象)、何週間も広告が掲載されないこともあった、などとある。
そうしたことが重なり、Yahoo!ではこの2年間モバイル広告への対応もあまり進まず、いまだに主力はPCウェブ向けのディスプレイ広告のままで、しかもその主力事業がジリ貧状態(2014年第2四半期には売り上げが7%低下とある)、市場シェアを20%くらいまで引き上げたいとしていた検索(広告)事業も逆に10%程度まで低下するなどで、これといった成長への手がかりが見つかっていない状態だという。
そういう状況の中でMayer自身は「あのSteve Jobsだって、Apple復帰からiPodというホームランをかっ飛ばすまでに5年くらいかかったのだから…」と、割と長い時間軸でYahoo!の再生を進めようとしているという。
ところが「そうは問屋が卸さない」という感じの手強い相手が、今秋初めに姿を現した。ウォール街で2013年あたりから売り出し中とされるJeff Smithという投資家(Starboard Valueというヘッジファンドの経営者)がその相手らしい。
*****
2013年3月に一度、テクノロジ分野の企業と縁のある有力ヘッジファンド経営者同士が派手な戦いを展開中という話を紹介したことがあった。あの話の中に出てくる連中がその後も折に触れて話題のネタを提供していたことは既報の通りだ。
たとえば、Carl IchanがApple株式を買い進める傍ら「Tim Cookと飯を食いながら、いろいろと話をした」などと何度かツイートしていたこと、あるいはDaniel Loebがソニーに対して「エンターテインメント部門を分社化しなさい」と提案していたことなどは、いずれも話題になっていたとの覚えがある。
冒頭で触れたFortune記事には、Starboard ValueのJeff Smith(42歳)が今夏にIchanやLoeb、あるいはBill AckmanやDavid Einhornといった大物連中もやったことのないような離れ技を見事に決めて、ウォール街の連中の度肝を抜いた、といったことが書かれてある。
Darden Restaurantという外食関連の大手企業(Red Lobsterなど複数の外食チェーンを傘下に収める、との説明あり)の経営陣に対して委任状争奪戦を仕掛け、ほんのわずかな持ち株比率でありながら大口株主を味方に引き入れてこの戦いに完勝、12人いた社外取締役をすべて自らの選んだ人間に入れ替えた、あるいはGoldman Sachsなど一流のアドバイザーを起用して教科書通りの対抗策を打ってきたDarden旧経営陣を見事に出し抜いた、などといった書きぶりである。
12月上旬には、このStarboard Valueが米大手事務用品小売チェーンのStaples株式を6%まで、同業のOffice Depot株式も10%までそれぞれ買い進めて、両社に対して合併するよう圧力をかけている、といったニュースも報じられていた(Staplesの時価総額が約92億ドル、Office Depotの時価総額が35億ドルとあるので、両方をあわせてもYahoo!の4分の1程度、それだけYahoo!の話の方が“大物狙い”といえるかと思う)。
このJeff Smith=Starboard Valueが目を付けたのが、Alibabaの株式公開(ニューヨーク証券取引所=NYSEに上場)で生じた巨額の含み益を有するYahoo!という格好だ。
本業の方もあまりパッとせず、再生に向けた取り組みでも大した成果を出せていないYahoo!の株価がそれでもこの2年あまりの間にずいぶんと上昇しているが、それもこれもこのAlibaba株式という資産があってのことだ。事実、2012年7月下旬に16ドル少々だったYahoo!の株価は、2014年11月下旬には52ドル台まで上昇し、2000年代初めのネットバブル崩壊以降で最高値を記録している。
Yahoo!は、Alibabaの株式上場後間もなく、全体の6%にあたる保有株を売却した(82億7000万ドルの税引き前利益を得た)が、それでもまだ15%も保有株が残っている。Alibabaの時価総額が2750億ドル(12月19日終値)なので、15%としても412億ドルということになる。
Yahoo!が日本のヤフーの35.5%を保有する大株主であることも周知の通り(ソフトバンクの36.4%に次いで第2番目、2014年9月末現在。ヤフーの時価総額が2兆5000億円とすれば、Yahoo!の持ち分はざっと8000億円超という計算になるか)。それに対してYahoo!自体の評価額は482億ドル。つまり持ち株を除いた本業の価値はマイナスとの見方もできるという状況らしい。
このあたりの話を比較的詳しく伝えている米経済ニュースチャネルのCNBCの記事によると、Mayerとしては、このAlibabaとヤフーの含み資産を維持して、Yahoo!本体の時価総額をなるべく高く保ち、それをテコにある程度規模の大きな買い物(企業買収)などをできるようにしておきたい、といった考えがある。