小さな漁村、大きな野望--「世界のハイテク工場」中国・深センの過去と未来(後編) - (page 2)

Steve Ranger (TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2014-12-26 06:30

 これは中国のハイテク企業にとってより大きな、そしてより根深い問題の1つとなっている。中国政府はインターネット上で大規模なスパイ活動を行っていると定期的に糾弾されているとともに、「中国のグレートファイアウォール」を設置してTwitterやFacebookをはじめとするソーシャルネットワークサイトや、ニュースサイトへのアクセスを制限している点を非難されてきている。中国政府の意思決定によって、中国のハイテク企業は特定国や特定業界で困難な競争を強いられる結果となっている。

 とは言うものの、米国以外の国々によるHuaweiに対する姿勢は少し異なっている。例えば英国では、Huaweiは過去10年にわたってBTの国内基幹電話ネットワークの主要サプライヤーとなっている。ただし英国政府は、セキュリティに関する脆弱性の存在を考慮し、Huaweiの機器を検査するための、政府による監視部門の設置をBTに義務付けている。

 2013年に英国政府が公表した報告書によると、その際に検出された脆弱性は「設計上の純粋な脆弱性か、コーディング上の過ち」に起因する可能性のもののみであったという。

 米下院の報告書に絡む一件から数年後、米国家安全保障局(NSA)の元契約職員であるEdward Snowden氏が、米国情報機関の手による大規模なインターネット監視プロジェクトの存在を暴露した(筆者は上海のとある店先で、Snowden氏と毛沢東主席、チェ・ゲバラの切り紙が並べられているのを見かけた。おそらく同氏の行動がNSAとは違った観点から捉えられているのだろう)。

 Huaweiの幹部らは、こと米国市場に関する質問については答え慣れているようだ。米国市場に関する質問を受けた同社のエグゼクティブディレクター兼戦略責任者のWilliam Xu氏は、「私たちよりもあなたの方が米国市場を気にしている」とジョークを飛ばした。また、Huaweiを非難していたにもかかわらず、米国がスパイ活動で指弾されたのは皮肉な話だと感じているのかという問いに対して、同氏は直接答えを返さなかったが、笑いながら「あなたはその答えを知っていると思う」と通訳を通して語った。

 当然ながら、同社は糾弾されている件ではなく、研究開発について話したいと考えているようだった。同社は15万人の従業員を抱えており、そのうちの7万人が研究開発に従事しているという。また、2013年には50億ドルを研究開発に投資し、現在では4万件近い特許を保有しているという。

 Huaweiは、モノのインターネット(IoT)の普及により世界中のネットワークを流れるデータトラフィックの量が大幅に増大すると見込んでいる。同社の予測では、ネットワーク機器の数が2020年までに1000億台になる。つまり、増大したトラフィックを取り扱うためにネットワーク機器の需要が増せば、同社は競争において適切なタイミングで適切な位置に付けられるというわけだ。また、同社は「2012」と呼ばれる研究所(トラフィックの大洪水が発生するという観点から、同名のB級災害映画にちなんで名付けられている)と、ビッグデータを扱う「Noah's Ark」(ノアの方舟)と呼ばれる研究所すら保有している。

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