大手旅行会社の阪急交通社は、販売や仕入れ、顧客管理などの基幹系システムの更改を業務のダウンタイムを最小限に抑えつつ7カ月で完了させた。日本オラクルが1月6日に発表した。
阪急交通社は、商品の企画、原価管理から仕入れ、流通、販売、顧客管理、経理処理にいたる基幹業務を担うシステムを「Oracle Database」で構築し、運用している。基幹システムには約800台のコールセンター端末を含む4000台以上の業務端末が接続されている。
年間で処理される旅行の予約件数は2013年実績で300万件、会員顧客の数は3000万人超、全体のデータ容量は1.8テラバイトに達する。同社のウェブサイトだけでなく航空会社など外部のシステムとも連携している。
システムに蓄積されたデータは社内のマーケティング分析にも活用されている。システム利用が集中する月曜日午前のピーク時のSQLの実行回数は1時間あたり6400万件、システム基盤には24時間365日の安定稼働と高い処理性能が求められている。
近年、旅行商品の販売量が急速に伸びており、基幹業務システムに蓄積されるデータ量が想定を上回るペースで増大しているため、マーケティング分析のためのデータ抽出や検索処理における応答時間が長くなって十分な分析ができないという課題を抱えていた。この状況を打開するため、阪急交通社ではハードウェアの刷新とOracle DBのアップグレードを含むシステム基盤の更改を決定した。
プロジェクトでは、データベースを安全で短期間にアップグレードするためにデータベーステストツール「Oracle Real Application Testing」を活用した。Real Application Testingの機能「SQL Performance Analyzer」で本番環境のアプリケーションで実行されたSQL処理の履歴をすべて取得し、それを検証環境で再現することで、性能分析や問題点を洗い出した。アプリケーションの安全かつ確実な移行を実現するための約5000本に上るSQL処理の全量検証を約1カ月半の短期間で完了できたという。
短期間でのシステム移行や性能改善のためにOracle DBのデータを保護、複製するための「Oracle Active Data Guard」も活用された。移行前のシステムと新データセンター間でデータベース内のデータを常に同期させ、移行当日の差分データについては旧システム停止後の数分間で同期させるという方法をとることで、データとシステム全体の移行作業を当初の目標だった48時間以内に完了できた。更改プロジェクトはTISが導入を支援した。
新システムでは更新系データベースとデータの抽出、検索に使う参照系データベースを分け、両者をActive Data Guardで同期するという設計で応答時間の改善を実現したと説明。阪急交通社によると、コールセンターのオペレーターが使用するシステムの応答時間も大きく向上し、予約登録処理にかかる従来の1件あたり20~30秒程度から約5秒まで短縮され、予約受付にかかる時間を全体で約30%短縮できたという。