ジグソーパズルのように
リボンプロセスのフェーズの2~5は、実はジグソーパズルの組み立てに似ている(図3)。
図3:ジグソーパズルモデル
ジグソーパズルを組み立てるときは、まずピースを並べて色や形などで分類するところから始まる(リサーチフェーズ)。次に外枠になるピースを組み立て、その次は分かりやすい簡単なところからピースを組み立てていく(変革実行フェーズ)。そして全体を俯瞰しながら足りないピースを探り(リプランニングフェーズ)、またピースを再分類して少しずつ組み上げながら最終形に向かっていく。そして、全てのピースがはまった時に絵(ビジョン)が完成する(エンディングフェーズ)。
ジグソーパズルを組み立てるときのように、この手法は少しずつ目標に向かっているという進捗感が得やすく、ピースができあがったところに関しては確実に効果を実感できるという二つのメリットを持つ。ジグソーパズルと唯一異なる点は、完成形の絵がどんなものであるか知らずに組み立てなければならないという点であり、この点で非常に難易度が高い。
ワークスタイルの完成形は、「最初は完璧に想像できない」と割り切る必要があるのだ。極論を言えばビジョンも、そしてKPIも、ワークスタイル変革には必須ではない。ぶれない判断軸と徹底的な従業員目線、そして実行に対する強いコミットメントがあれば、ワークスタイル変革は必ず達成されるであろう。
ワークスタイル変革は企業の価値を変える
第2回から今回にかけて「ワークスタイル変革」を中心にお届けしてきた。連載のテーマに照らし合わせると、メッセージとしてはシンプルに「ワークスタイル変革は企業の価値を変える」ということである。その中心にあるのは間違いなくデジタルテクノロジになるだろう。デジタルテクノロジによる従業員個人のバリューシフトが積み重なって、企業の価値を変えるのだ。
第1回でも述べたが、ワークスタイル変革はデジタルバリューシフトの試金石的な存在であり、いわば序の口である。モバイル技術が人の働き方を変え、さらにクラウドの登場で企業のビジネスモデルが変わり、IoT/IoEの時代になれば社会そのものが大きく変わる。ワークスタイル変革に関する方法論は一段落とし、今後の連載ではよりスコープを拡大してデジタルテクノロジによる企業の価値変遷を、ビジネスモデルの視点で読み解いていきたいと思う。
- 林 大介
- シスコシステムズ合同会社 シスココンサルティングサービス マネージャー 電機メーカのエンジニア、通信システムインテグレーターのセールスを経てコンサルティングの道へ。ネットワーク、モバイルを中心とし た戦略立案、新規事業開拓、テクニカルアドバイザリーを中心としたプロジェクトを多数実施。昨今はクラウド、M2M、IoT/IoE などの技術トレンドを背景にしたワークスタイル変革に注力し、変革実行支援やソリューション販売支援などを手がける。