スマートマシン時代の到来

コネクテッドカーと自動運転技術が作る未来(後編) - (page 3)

林 雅之

2015-01-19 07:00

デメリット:想定外の事故や法制度の整備など

 主要国では、自動運転車の普及を想定した法制度が未整備の状況だ。

 日本では公道で運転者がハンドルから完全に手を離す行為を認められておらず、あくまでも運転を支援する機能として位置づけられている。

 米国では、ネバダ州、フロリダ州、ハワイ州などで公道での自動運転車のテスト走行のみ合法化されている。ようやく、カリフォルニア州が他の州に先駆けて2014年9月からVolkswagen、Mercedes-Benz、Googleが所有する合計29台が公道を走行することが認可されたという段階だ。

 自動運転車の普及にあたって、同じ車線内で自動と手動の車両が共存する状況を想定し、道路交通法を自動運転車向けに改定するといったように、法整備を含めた環境整備をする必要性が指摘されている。日本では国土交通省が、高速道路に限り自動運転を段階的に認める方向で検討中しているが、一般公道での利用には時間を要すことが予想される。

 走行の認可だけでなく、自動運転車を利用する際の運転免許証の有無や交通違反時の罰金の支払いといったように法制度においても検討すべき課題も多い。

 自動車メーカー各社は、衝突回避システムなどの安全技術をベースにぶつからない自動運転自動車の実用化に向けて開発を進めており、安全性の向上が期待されている一方で、安全性のリスクも指摘されている。

 自動運転車のプログラムのバグやシステム障害の発生、雪などの悪天候でカメラが機能しない場合など、想定外の事故を起こす可能性がある。

 また、技術の進化により人工知能はクラウド上で膨大なデータから適切な分析による判断ができるようにはなってきているが、人間のような倫理観や道徳観がなければ、致命的な事故を起こす可能性も否定できない。

 警察庁が発表した資料によると、2013年度の人為ミスなどによる交通事故発生件数は年間62万件を超えており、そのうち4000人以上が交通事故で命を落としている。自動運転車の普及が進めば、現状よりも交通事故の発生件数の減少が期待されるものの、自動運転によって事故が発生した場合は、自動運転の安全性が厳しく問われるだろう。

 事故の発生は、自動運転車のプログラムのバグや利用者の設定ミスが原因なのかといったように責任分界も課題になる。自動運転車が外部からハッキングされて犯罪に悪用されるリスクも高まっていく可能性がある。

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