原油、銅など資源価格が軒並み大きく下がっている。世界中に原油、天然ガス、石炭、鉄鉱石、銅などの資源権益を有する大手総合商社に逆風だ。今日は、商社株の投資について、楽天証券経済研究所のチーフストラテジスト、窪田真之氏が解説する。
資源安でも比較的堅調だった大手総合商社の9月中間決算
大手総合商社5社で見ると、住友商事(8053)は北米シェールガスの権益に減損が発生して今期(2015年3月期)赤字だ。ただし、他の4社、三菱商事(8058)、三井物産(8031)、伊藤忠商事(8001)、丸紅(8002)の業績は、比較的堅調だ。
総合商社大手5社の9月中間連結決算実績

(各社資料より楽天証券経済研究所が作成)
非資源事業の拡大と円安が増益に寄与
まず、総合商社の利益を見るときに一番大切な連結純利益を見てみよう。三菱商事は15%増益、三井物産は9.3%増益だ。資源事業の利益は減少するが、非資源事業の利益拡大が増益に寄与する。各社とも、資源事業に利益が偏らないように過去5年以上、非資源事業の利益拡大に注力してきた。その成果が出ている。
また、円安も商社の利益拡大に寄与している。商社は海外でビジネスを幅広く展開しているので、外貨建ての利益をたくさん稼いでいる。円安によって円に換算した利益が拡大している。
(参考)円安でなぜ商社の利益が拡大するか?
海外で1億ドルの利益を稼いでいる商社は、1ドル100円の時は100億円の利益を稼いでいることになる。ところが、1ドル117円になると、1億ドルの利益は117億円の利益に変わる。円安が17億円(17%)の増益要因になる。
包括利益が大きく増加
総合商社を見るときに2番目に大切な連結包括利益をご覧いただきたい。三井物産は53.1%、丸紅は32%と大幅に増えている。総合商社は、世界中でいろいろな種類の事業に投資している。事業会社としての側面と、投資会社としての側面がある。
円安が進行したことで、海外で投資している外貨建て資産の価値が大きく膨らんでいる。私たちが外債に投資して円安が進むと、為替差益が得られるが、それと同じだ。
また、今期は、株や不動産などさまざまな投資資産が世界的に値上がりしているので、その効果も包括利益を拡大させている。
(参考)包括利益とは
<包括利益>=<純利益>+<評価益の増加>
例えば、1000円で買った株を1100円で売却すれば100円の純利益が得られる(税金・取引手数料はないとして計算)。1000円で買った株を売却せずに1100円の時価で保有している場合は、100円の含み益が包括利益に計上される(税金が存在しないと仮定した計算)。