3万円前後という市場の平均価格に対し、246 Padlockは税別価格は1万246円に設定した。製造原価で考えるともっと高い値段をつける必要があるが、この価格で製品化したのは、デジタルで錠前を開け閉めできるようなプロダクトが、どのように社会やビジネスを変えるかを見るためという。製品や体験のレポートやデータを製品にフィードバックし、将来的にスマートロックを使って複数の企業がビジネスをするエコシステムを構築することが狙いと説明している。
246アプリイメージ
さらに家電メーカーamadanaの運営するスマートプロダクト共創プラットフォーム「amidus」にてユーザーやクリエイターたちと246デバイスをいかに使うかを構想する企画開発プロジェクトも開始している。
「どれだけカジュアルに多くの事業者に246を利用してもらえるかに注力する。246を使って自分の顧客に課金をする事業者も出てくるだろうし、特定のアカウントに便益を受けるようなサービスを提供する事業者も出るかもしれない」
イノベーションが命題
246の開発に携わったのはエンジニアや映像制作などアートデイレクターなどの職歴がバラバラの5~6人。ソフトではない、モノの開発に関しては「素人」たちが作った。それぞれの領域のプロフェッショナルたちはアプリケーションデザインの見せ方やコンセプトなど、自分の得意分野の知見を製品に生かした。製品開発に経験者を入れなかったのは「素人は学習意欲も強く、固定概念にしばられず、今までにない発想ができるため」という。
吉羽氏は、短期でリターンが得やすい分野よりも全く社会を変えるような新しいモノやコトを作るために電通ブルーは設立されたと話す。そのため一緒に働く従業員は電通ブルーが出す製品やサービスの社会的意義や、世の中が変わる様などの興味や切望を持っている人が多い。金銭的なものより自分の興味を優先する人たちで従業員で構成されているとした。
電通ブルーに参加した従業員には、株式公開などで収入があった場合に、その収入に見合った報酬を与える給与体系としている。
製品開発に広告業界の手法を取り入れる
吉羽氏は広告的な考え方が新しいプロダクトを開発する際に有効なのではないかと話す。広告業界では、例えばつまようじをみても、つまようじをどうイノベートするか、どうやって売れるかを思考する必要があるという。
どんなクレイジーなアイデアでも真剣に議論する人が多いのも特徴と説明。広告会社はクライアントありきな部分もあり、すばらしいアイデアであっても、クライアントに却下されればお蔵入りしていたと話す。「アイデアの宝庫である広告クリエーターのDNAからモノの開発に取りくむ」(吉羽氏)。現在は、近距離無線技術「iBeacon」を防犯に使えるかどうか検討を進めているほか、複数のプロダクトを開 発中だとしている。
「われわれは決して自分たちが優秀な集団だとは思わない。スマートロックもわれわれよりも技術的にはうまく作れる人が多くいるはず。既存企業でもできるかもしれないが、他の企業ではさまざまな制約があるために“やらない、やれない”ことにわれわれは取り組む。市場の開拓者になってその分野での知見をためていけば、世の中を揺るがすようなモノが作れると信じている」