本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、富士通の田中達也 執行役員副社長/次期代表取締役社長と、シマンテックの植山周志 マーケティングマネージャーの発言を紹介する。
「グローバル競争を勝ち抜くために、プラスアルファの専門力を高めていきたい」 (富士通 田中達也 執行役員副社長/次期代表取締役社長)

富士通 執行役員副社長/次期代表取締役社長 田中達也氏
富士通が1月19日、社長人事を発表した。同日付けで執行役員常務から同副社長に昇格した田中氏が、6月22日付けで代表取締役社長に就任する。現社長の山本正已氏は代表取締役会長に就任する。田中氏の冒頭の発言は、その発表会見で、同社がこれからのグローバル競争で勝ち抜くためのポイントについて述べたものである。
田中氏は入社以来、一貫して営業畑を歩み、中国などアジア地域のトップを務めるなど海外経験も積んできた。会見の冒頭でも「私は入社以来、一貫してお客様の現場に身を置き、テクノロジの進化やそれに伴うICT利用、活用の広がりを目の当たりにしながら、市場競争に立ち向かってきた。そうした最前線で培ってきた経験を生かして、これからの当社の成長戦略をさらに推し進めていきたい」と、自らの国内外での営業経験を生かしていくことを強調した。
そんな田中氏を次期社長に選んだ理由について、山本氏は「富士通は今後、さらに変革を推し進めてスピーディーな経営を行わなければならない。田中次期社長はそうした変革に向けた意欲と行動力に優れている。また、グローバルビジネスにおける経験や理解も深い。さらに社長として必要な胆力や迅速な判断力も兼ね備えている」と説明した。
発表会見のさらにくわしい内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは田中氏の冒頭の発言における会見での質疑応答のやりとりにフォーカスを当てたい。
筆者が田中氏に聞いたのは、「富士通にとってグローバルなICT市場で最も競合相手になるのはどこか。また、そうした競合と戦っていく上で最も大事なことは何か」ということだ。この質問に対し、同氏は次のように答えた。
「これからのICT市場では、特定の競合がいるわけではない。特にサービスビジネスはICT業界に限らず、他の業界からもどんどん参入してくる可能性がある。そうした動きをいち早くキャッチして自らの活動に反映するような“目利き”の能力がこれからますます求められる」
「グローバル競争を勝ち抜いていくためには、ハードウェアであれソフトウェアであれサービスであれ、お客様に“富士通ならでは”と認めてもらえるような“プラスアルファの専門力”を高めていく必要がある。それこそが富士通の付加価値であり、競合との差別化ポイントになる」