長年のApple製品愛好者を自称し、「John Scully時代のような経験はもうこりごり」と記すMalikがここで念頭においているのは、主にネットワーク/クラウド側のこと――たとえば、「Google Now」の背景にあるマシンインテリジェンス(AI)やデータ処理に関する能力のことで、Appleがそうした部分をもうちょっとなんとかしないと、ハードウェアの素晴らしさだけでは長くこの世の春を謳歌することは難しいのではないか、といった懸念を示している(たとえば、MacのiTunesで購入した楽曲をiPhoneで探し出すのに苦労した、といった経験のある方なら、このMalikの指摘の意味が感じ取れるかと思う)。
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Appleに対してこうした危惧感を抱いているのは、Malikだけではないようだ。Vox Mediaが運営するIT&エンターテインメント系ニュースサイトのThe Vergeの編集長、Nilay Patelが年初めに執筆、公開していた“今年の業界動向予想”といった趣の記事には「今のAppleが2000年前後のソニーに似ている」という指摘がある。
Facebook is the new AOL--The Verge
この記事の中盤あたりには「Appleは新しいソニー(“Apple is the new Sony”)」という小見出しがあり、その少し下には「ソニーにとってソフトウェア(への理解不足)が致命的な弱点だったのと同じように、今のAppleにとってはサービスが命取りになりかねない(“SERVICES ARE TO APPLE WHAT SOFTWARE WAS TO SONY: A CRITICAL WEAKNESS”)」云々というキャッチが踊っている。
トリニトロンテレビのほかに「Walkman」「Discman」「Mega Bass」「VAIO」 「Clié」「AIBO」など優れたあるいは面白いハードウェアを次々にリリースし、誰にも止められないような勢いだったソニーが、ソフトウェアに対する理解不足(“Sony's failure to understand software”)から、AppleやSamsungの台頭を許した。それと同じように、Appleの(ウェブ)サービスに対する理解不足という問題が解決されなければ、いずれはそれが致命的な弱点になりかねない。
今ではGoogleやMicrosoftあたりでも「Appleに倣え」とばかりにソフトウェアとハードウェアの緊密な統合を進めているので、その面でのAppleとの差は縮まるだろう。Appleがこれからも優位を保つためには、Google並みのサービス――ユーザーが安全に感じ、かつさまざまなでデバイスから利用可能なものを出さなければならない…。The VergeのPatelはそうした指摘をしている。
こうした見方がどこまで的を射たものかという点は当然意見の分かれるところだろうが、ここで指摘された懸念の材料―弱点に対して、今後Appleがどう対処していくか、というのはやはり大きな注目点のひとつと思われる。
(敬称略)