データ分析で価値を出せれば、顧客は定着する--ブレインパッド草野社長 - (page 5)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部) 2015年01月29日 17時35分

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小売店での人の流れを分析

--家計簿アプリや企業への出資にも取り組んでいる。

 スマートフォン向け家計簿アプリ「ReceReco」は、2013年1月にリリースしています。これは人間をセンサ代わりにするという発想で、ユーザーがデータを提供してくれます。私生活のメモをノンバイアスで、映画のチケットまで含めて消費行動を登録する人はなかなかいません。それが、毎日万単位以上でデータが入ってくるということに意味があります。

 出資については、2012年12月にテクトムに一部出資し、続いて2013年8月にミディーという会社を子会社化しました。テクトムはテレマティクスの会社です。日本の自動車メーカーは、「CAN(Controller Area Network)」と呼ばれる車載ネットワークの通信内容にエンコードをかけていて、それぞれ独自性が高く、ワンデバイスで複数メーカーのCANの内容を引き出すことができません。

 各メーカーの系列の電装機器メーカーは、その系列のメーカーのデータを引き出すような端末は作れますが、ワンデバイスでどのメーカーのデータも取れるようなのはできない。テクトムはその技術を持っているところが強みです。

 なぜ出資したかというと、テレマティクスのマーケットは現在、高級車のみで狭い。かといって、各メーカーが一斉にテレマティクスを自動車に搭載しても、普及までには10年かかります。そうすると、既存の自動車に後付けできるテレマティクスデバイスを作るプレイヤーが出てくると考えたためです。そこに出資しておけばトレンドを追えますからね。普及すれば、データを分析することでいろいろなことができると思っています。


 ミディーは購買データなどメタデータの提供事業を営んでいます。スーパーなどに設置して撮影した映像から店内での購入客の流れやどんな商品を触ったかなど人の行動を定量化することで何が見えるのか探ることにトライしています。ミディーはセンサを作っている会社でもなければ、解析技術にすごく長けているわけでもありません。われわれが期待しているのは、いち早く買い物客のセンサデータを取得、分析し、施策を考えられるというアドバンテージです。

 小売り業に対し、人の行動を分析するセンサを売りたい会社が出てきたとして、分析した結果何ができるのかセンサのメーカーは保証できません。やり方次第、データの取り方次第ということになります。

 先にセンサを設置しておいて、分析から何ができるかわかっていればアドバンテージになります。そこでわれわれがセンサを持ち出しで買い、設置だけさせてもらって、出てきたデータを再販する試みに取り組んでいます。そうすると、メーカーがセンサを設置してハードウェアを売ろうとするよりは、データを生成して価値化して売る方がハードルが低くなります。われわれなりに自分たちの体力でできるIoT的なものにトライアルしているわけです。

--データ分析市場の展望は。

 ちょうど最近、2020年くらいのことを考える機会がありました。5年先を考えるにあたって、では5年前はどうだったかというと、スマホで言えばiPhone 4が出ていました。そうすると、ここ5年で大きな変化はないように感じます。メディアの閲覧行動は変わりましたが、日常生活がすごく変わったかというとそうでもないですよね。今後5年も劇的な変化はないと思っています。

 ビッグデータもここ数年のキーワードですが、ビッグデータを使ってずば抜けて差別化した会社があるかというと、そうでもない。今でも使いあぐねている企業が多いのではないかと思います。

 分析でも、経営レベルが意識しないと活用されません。それは、分析の結果に基づいてアクションを取ろうと思うと実オペレーションを変えなければならないからです。それは現場が嫌がりますよね。それでもいいからやれというのは、経営が分析結果を後押ししないと無理です。

 そもそもITで差別化しようという発想がない経営者が多いから、“攻めのIT投資”も相対的に弱い。そのような環境だと分析だけが差別化の要素とはならないでしょう。まずはITで差別化しようと思うはずです。

 海外企業はパッケージソフトを買いますが、システムを内製する傾向が強い。アウトソースの割合は25%といわれています。一方、日本ではITエンジニアの75%が企業外にいるといいます。アウトソースしていいということはノウハウが漏れてもいいことになりますから、やはりITで差別化しようという発想は日本の企業では弱いと感じます。そういう意味では、日本はここ5年で変化はありません。海外は大きく変わっていると感じますが。

 経営者としては危機感を抱いています。ブレインパッドでも、調査をかねて右腕の人間に1年間、米国を中心に活動してもらいました。やはりシリコンバレーのスピード感、そこで投資される金額、イノベーションを起こそうとして働いている人たちのレベル感はものすごいということを肌で感じてきたそうです。

 シリコンバレーではどんどん新しいものが生まれています。それをベースの活動に活かそう、試そう、それで差別化をしようという意識はすごく高いですね。グローバル企業が多いので分析するデータの量も大きくなります。日本のメーカーは海外に出ていますが、扱うデータはまだまだ少ない。

 環境の違いはありますが、データを使って社会をよくしたいと思って始めた会社です。データの力を生かせるような環境を作って行きたいと思います。

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