<参考>核燃料サイクル事業について
現在、日本は、核燃料サイクルが実現することを前提に原発を推進している。核燃料サイクルとは、使用済み核燃料を再生してMOX燃料を作り、繰り返し発電に使う事業のことだ。最終的に天然ウランに含まれるエネルギーの7割近くを発電に利用できる可能性がある。
現在の原発(軽水炉)で、燃料として使用しているのはウラン235だけだ。ウラン235は天然ウランに約0.7%しか含まれていない。残り99.3%は核分裂しないウラン238なので、発電に使えない。つまり、現在の原発では天然ウランの持つエネルギーの約0.7%しか使用していない。アメリカ・カナダ・ドイツ・フィンランド・スウェーデンなどは、技術的に難しくコストがかさむ核燃料サイクルはやらない方針を決めている。ウラン235だけ使って発電し、使用済み核燃料は、廃棄処分する方針だ(図A)。
<図A>核燃料サイクルを行わない場合:使用済み核燃料を直接処分

ウラン238の持つエネルギーまで活用するのが核燃料サイクル事業だ。ウラン238の一部は、ウラン235が分裂する際に出す中性子を吸収することでプルトニウムに変わる。このプルトニウムを使って再生燃料(MOX燃料)を作り、軽水炉で発電を行うのがプルサーマル発電だ(図B)。
<図B>核燃料サイクルを行う場合:プルサーマル発電まで

さらに、MOX燃料を使って高速増殖炉で発電すると、発電に使ったプルトニウムの量を大幅に上回るプルトニウムが得られる。そうすると、使用済み核燃料は、繰り返し何回も使える貴重な資源になる(図C)。
<図C>核燃料サイクルを行う場合:高速増殖炉まで

高速増殖炉を実現して、MOX燃料を何回も再生して使用し、天然ウランの持つエネルギーの7割まで活用できれば、原子力は計算上、人類が使用するエネルギーの1000~2000年分をまかなうことができるようになるはずだった。
ところが、日本の核燃料サイクル事業は、現時点でまだ何も実現していない。使用済燃料から未使用のウランやプルトニウムを取り出してMOX燃料に加工する予定であった青森県六ヶ所村の再処理工場は技術上の問題が次々と出て完成が遅れている。
核燃料サイクル構想は、高速増殖炉の開発でも遅滞している。日本では、再処理したプルトニウムで動くはずであった高速増殖炉「もんじゅ」は1995年にナトリウム漏洩事故を起こして以来、実質稼働停止のままだ。欧米でも技術的な困難と経済性から、高速増殖炉の開発は断念する国が増えている。
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