対談を終えて
チームラボがクリエイティブを重視する企業であるという点は考慮する必要があるが、デジタルバリューシフトという観点からいくつかの示唆を得ることができた。対談中、堺氏は何度も「ブレない企業コンセプト」に言及した。デジタルテクノロジによる企業価値変革という文脈で考えた場合、顧客が評価する企業価値は、その企業が持つコンセプトという軸に沿って変遷していくものということが改めて確認できた。
デジタルテクノロジはその変遷を促す武器である。つまり、企業コンセプトという軸がなかったり、曲がっていたり、あっても意識されていない場合は、いくら素晴らしいデジタルテクノロジを導入しても価値の変遷は起こらないだろう。
もう一点、デジタルの良さとして堺氏が挙げた3項目「劣化しない」「重さがない」「スケールする」は、これからのIoT/IoE時代におけるビジネスモデルの考え方に大きく影響するだろうと筆者は考えた。今日のITシステムの多くは、数年で陳腐化(劣化)し、データの可搬性は低く、スケールアップ/スケールアウトしにくい。言い換えれば、デジタルテクノロジを利用したシステムでありながら、そのデジタル本来の恩恵を受けていないのだ。
しかし、逆に考えればチャンスでもある。全てがネットワークにつながる時代において、デジタルの良さを最大限発揮した仕組み(ビジネスモデル)を提供することができれば、その企業の価値は大きく変遷することだろう。
その企業が提供する製品やサービス全てがネットワークにつながったら、という観点と、それを実現するデジタルテクノロジが本来の力を発揮できたらどうなるか、という観点を持ってビジネスを構想すれば、米AppleのiTunesやハイヤー配車のUberのように業界破壊的な製品やサービスのアイデアにたどり着くことも夢ではない。
対談を終えて、右が堺氏で左は筆者
- 林 大介
- シスコシステムズ合同会社 シスココンサルティングサービス マネージャー 電機メーカのエンジニア、通信システムインテグレーターのセールスを経てコンサルティングの道へ。ネットワーク、モバイルを中心とし た戦略立案、新規事業開拓、テクニカルアドバイザリーを中心としたプロジェクトを多数実施。昨今はクラウド、M2M、IoT/IoE などの技術トレンドを背景にしたワークスタイル変革に注力し、変革実行支援やソリューション販売支援などを手がける。