住宅事業で2兆円目指すパナソニック--拡大する事業を支える工場の現場 - (page 3)

大河原克行

2015-01-31 12:00

 柔らかくなったブロックは、機械でスライスして「表面化粧単板」が完成する。表面化粧単板は、1秒間に40~45枚の速度でスライスされ、ひとつのブロックからは1200~1500枚が取れるという。1枚あたり250ミクロンという薄さだ。最後の工程は、2人の担当者が目視で確認。接着剤がしっかりついているか、破れがないかといったことを瞬時に判別する。

 完成した表面化粧単板は、床材製造工程を持つ床材工場に投入される。

  • 表面化粧単板の最終工程。1秒間に40~45枚の速度でスライスされ、2人の担当者が目視で確認する

  • 完成した表面化粧単板。非常に薄いものだ

  • 床材製造工程を持つ床材工場の様子

  • 床材仕上げラインでの最終検査工程。太陽光に近い明るさの環境で目視で検査する

  • 照りにこだわった製品。見る角度で変化する

  • 左の床材と右から2本目の床材は同じデザインとなる。こうしたものをどう組み合わせるか、どこに使うのかといったことも提案する

 床材工場では、プレスラインと床材仕上げラインの2つの生産ラインで構成される。

 毎分100mの加工が可能なプレスラインでは、まずは貼り合わせ工程からスタートする。接着材を塗布したのちに、表面材貼り工程に入り、カメラで位置を自動的に調整し、基材に化粧単板を的確に貼り付ける。「従来は人で行っていたが、自動化することでスピードと精度はともに2倍に向上している」という。ここでは化粧シートと呼ぶ印刷物を貼る場合もある。

 貼り合わせたものは、110度の熱板で熱圧プレスを行う。群馬工場では、1枚ずつプレスを行う機械を40台導入しているが、「複数枚数を同時にプレスする機械に比べて、厚みのばらつきを修正できること、さまざまな化粧単板を混流できるといったメリットがあるそのため、古い機械でもそのまま使い続けている」という。その後、全量を目視で検査して、低温高湿の状態の環境で、積載養生による含水率の安定化および完全な接着を行うことになる。

全量を目視で検査

 床材仕上げラインでは、表面研削工程から始まる。3種類のサンドペーパーを使って研削を行っており、これで表面の凹凸をなくす。長手加工工程では、テノーナと呼ぶ機械を使って溝などを切削。さらに、面研磨、溝研磨を行うと、今度は着色工程、塗装工程に入る。

 着色工程では、スポンジとメッキローラーなどを使い、色を調整する。塗装が終わるとジェットドライヤーで塗装を乾かすことになる。群馬工場は寒い場所にあるため、塗装がしっかりと乾くように工場内の室温を自動で計測し、それにあわせてジェットドライヤーの温度を設定するという。これらの温風を出すために、不要となった木くずを燃やして発生したエネルギーを使用しているという。

 塗装工程では、色というよりも品質を高めるための役割が中心となる。下塗りでは凹凸をなくすことが目的となり、中塗りでは耐磨耗性を実現するための塗装を行う。そして、上塗りでは、耐傷性やアレル物質対策などが施される。この3つの塗装工程を経ると、下塗りではざらざらしていた表面が、上塗りが終わると、表面はツルツルしたものに変わっていた。

 その後、全量を目視で検査。この作業は認定された作業員だけが行うことになる。プレスラインと床材仕上げラインのなかには、7カ所ほどで自動検査が行われ、工程内での品質維持が行われている。検査が完了すると、梱包ラインに運ばれ、自動梱包機で梱包され、出荷されることになる。一部の完成品は、ヒーターや温水ポンプを埋め込んで床暖房機能付き製品に加工されたり、裏溝加工やクッション材を貼付して防音機能付き製品に加工されたりする。

丁寧なモノづくりが意味するもの

 群馬工場を見て感じてのは、日本の生産拠点ならではの丁寧なモノづくりがパナソニックの床材を生んでいるということだ。そして、中高級品へのシフトを強化する上でも、群馬工場におけるモノづくりは重要なものになる。床材は、住宅関連事業の成長を支える製品のひとつとして、日本でのモノづくりへのこだわりが、これからも大きな意味を持ちそうだ。

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