ビッグデータ新潮流

ビッグデータマーケティングという新戦場--ヤフー自信の根拠 - (page 2)

鈴木恭子 怒賀新也 (編集部)

2015-02-09 07:30

「ハコ売り」ではない

 Yahoo! DMPは、ヤフーが提供するサービスを利用したユーザーの行動データを分析し、それに基づくユーザーセグメントを顧客企業に提供する。顧客企業が持つデータとヤフーのユーザーセグメントをリアルタイムで掛け合わせることで、企業は今までのマーケティング手法では限界があった行動予測による新規層の開拓や、購買確率の高いユーザーにアプローチできる仕組みを提供する。データの収集と広告の配信は、デバイスに依存しない。

 例えば、小売り企業や航空会社などが、自社が持つ会員データを分析しただけでは見えてこないような情報を得るために利用する。会員の年齢や住所などで設定したセグメント情報に、ヤフーが持つデータを掛け合わせることで、そのセグメントに共通する趣味や嗜好(しこう)の傾向といった情報を合わせて分析できるようになり、より深く対象セグメントの顧客の行動を分析できるようになる。

 ヤフーが注力する取り組みだが、DMP市場には競合企業も多い。IBMやOracle、富士通といったハードウェアメーカーをはじめ、ウイングアーク1stやトランスコスモス・アナリティクスといったビジネスインテリジェンスのソフトウェアメーカーなど、異なる分野の企業が、DMPを提供している。

 この点について高田氏は、「Yahoo! DMPは既存のハードウェア企業が提供するDMPソリューションと競合しない」と言い切る。その理由は、データに対するアプローチとマーケティングに対する考え方の違いだという。

Yahoo!DMPの概要
Yahoo!DMPの概要

 「米国では各企業がデータサイエンティストを抱えているケースが多いが、日本企業では少ない。データを収集し加工し、活用し、最適化を測るためにはある程度のスキルが必要となる。しかし、一企業がスクラッチでビッグデータ活用プラットフォームを構築し、データを収集/分析して活用するには、数百億円の投資が必要だ。DMPは“ハコを売って終了”のインフラ事業ではない。われわれは、自らがビッグデータを活用してサービスを提供している。その知見を顧客に提供するのがYahoo! DMPであり、このノウハウの提供が、ハードやソフト(ライセンス)を販売するベンダーとの大きな差異ポイントになる」(高田氏)

 Yahoo! DMPの優位性について同氏は「『Yahoo! JAPAN』で収集したマルチビッグデータが標準実装されていることだ。ビッグデータ活用には、データを蓄積する“ハコ”やデータ解析ソフトが必要だと考える企業は多いが、活用するデータがなければ意味がない」と、同社がビジネスの特性上持っている圧倒的なデータ量を強調する。

 また、マーケティングに対するアプローチも、「米国の導入事例がそのまま日本で通用するのか。その国特有の事情を加味する必要がある」と指摘する。例えば、米国にはサイト上の行動履歴だけでなく、実店舗で利用するポイントカードの利用状況などのデータを収集/販売する「データサプライヤー」が存在する。

 しかし、日本にはデータサプライヤーがおらず、データの収集には手間とコストがかかる。そうした差異を無視して米国の成功事例を真似しても同じ成果は得られないというのが、高田氏の考えだ。

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