--各企業の経営者はCIO（最高情報責任者）とどんな連携をして、何をしているのか。
佐々木氏 もともとふたつの役割があって、ひとつはオムニチャネルプロジェクト全体の推進の支援です。プロジェクト進行上の課題の解決、組織図、チーム作り、予算作り、計画作りという話ですね。もうひとつは、実際にデジタル接点を再整理しようとしています。具体的にはウェブ、アプリ、ECサイト、グループ全体を整理しています。この2点に関係する部分をすべてネットイヤーグループが担当しています。
石黒氏 顧客の経営者やマーケターと話をしていて感じるのは情報システム部門というと、「言われたことをやる部門」という認識が強くあるという点です。セブン&アイ・ホールディングスの場合は経営トップが全部コミットして、プロセスの中に情報システム部門がちゃんと入ってディスカッションにも参加しています。
そうすることで、情報システム部門も「なぜ変えなくてはいけないか」という理由や、そのために自分たちがどう動かなければならないかを考えるようになっています。これは、情報システム部門がどう変わればいいかというヒントになると思います。なぜこれをしなくてはいけないかということをよく理解しているんですね。シンプルですが、そのようなやりかたが「ではどうしたら課題を解決できるんだろう」と考えることにつながります。
CIOを新設
佐々木氏 整理すると、もともとはセブン＆アイ・ネットメディアという会社が、グループ全体のネット戦略を担っていましたが、現在はセブンネットショッピングというECサイトを運営する会社と合併。現在、セブン＆アイ・ネットメディアを中心にオムニチャネルプロジェクトが動いています。ある意味、ホールディングスという会社がクライアントで、セブン＆アイ・ネットメディアという会社がオムニチャネルプロジェクトを受託しているような形です。
セブン＆アイ・ネットメディアという会社には、ECを運用していたチームがあり、そこが情報システム部門のような形で全体のシステム、要件を作っています。それをさらに推し進めるために、2014年12月2日にグループCIOが新設され、ホールディングスにもCIOが設置され、鈴木氏が任命されました。オムニチャネルプロジェクトの求心力、推進力を高めるために、ホールディングスの方にCIOの権限を明確に持たせることで、グループ全体の戦略の意思決定をよりしやすくするわけです。
一歩踏み込んだ組織改革にも取り組んでいます。オムニチャネル推進室という固定の組織が全グループ会社にできたことです。もちろん兼務もありますが、各社に数人オムニチャネル担当が設置され、担当者をコントロールするCIOが新設されたという流れです。グループ全体のIT戦略というか、オムニチャネル戦略が推進しやすい体制作りを進めています。
ただ、体制という意味では、それほど整備されていない状況です。一般論として、業界比較で言えば小売業界の情報システム部門は先進的ではありません。他のメーカー、サービス、全体的に情報システム投資は少ないカテゴリで、社内の情報システムは相対的に他の業界に比べれば高く、システムインテグレーターへの依存度が強い構造という認識ですが、そのままではいっこうに変化は起きません。
経営者の中にIT戦略のビジョンを描ける人がいて、そのビジョンをテクノロジによって実現させるんだという姿が描ける人がいたというのがポイントだと思います。他の会社では、オムニチャネルのようなことに積極的に取り組んでいる会社、あるいは逆に経営者がそれに気づいているわけではなくて、すごく優秀なミドルマネージャーがいて、その人が柔軟に自分の領域を超えて社内を走り回って調整してどんどん形にしていき、事後了解をもらっているくらいの状況です。無印良品などいくつかの会社はマネージャーが優秀なので、IT推進やITのビジョンが描けてしまいます。
