本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本HPの岡隆史 代表取締役副社長執行役員と、日本マイクロソフトの加治佐俊一 最高技術責任者の発言を紹介する。
「企業でのタブレット利用はこれからさまざまな用途への導入が本格的に始まる」 (日本HP 岡隆史 代表取締役副社長執行役員)
日本HP 岡隆史 代表取締役副社長執行役員
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が先ごろ、企業向けタブレットの新製品8機種を発表した。同社の代表取締役副社長執行役員でプリンティング・パーソナルシステムズ事業を統括する岡氏の冒頭の発言は、その発表会見で、今後の企業でのタブレット利用の方向性について語ったものである。
岡氏は企業でのタブレット利用について、「これまでは汎用的な製品を具体的にどのような用途に使えるかについて、ユーザー企業がシステムインテグレーターなどと相談しながら模索してきたケースが多かった。そうした試行錯誤を経て、最近ではこんな用途に有効ではないかということが、だいぶ分かるようになってきた」とした上で、今後の動きについて次のように語った。
「そこでこれから求められるのは、タブレットを有効活用できるさまざまな用途向けに、ハードウェアとして最適化された機能やデザインを施していくことだ。その意味では、企業でのタブレット利用は、さまざまな用途に向けてテストフェーズから本格的な導入フェーズに入ったという実感を持っている」
このコメントのエッセンスが冒頭の発言である。HPではこうした認識のもと、タブレットの普及拡大戦略として、さまざまな用途に対応した「製品ポートフォリオの拡充」をはじめ、生体認証なども取り入れた「高度なセキュリティ」、さらなる「サポートサービスの拡充」といった点に注力していくとしている。
今回、日本HPが発表した新製品8機種の詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは岡氏が語った「タブレットを有効活用できるさまざまな用途向けに、ハードウェアとして最適化された機能やデザインを施す」というHPの基本的な製品戦略に注目したい。
というのは、企業向けタブレット市場においてHPの競合となるAppleの「iPad」やMicrosoftの「Surface」は、製品ブランドを前面に押し出した“汎用品”であり、製品戦略としてHPとは“対極”にあると見て取れるからだ。
なぜ、HPはこうした製品戦略に打って出たのか。発表会見後、岡氏に聞いてみた。するとこんな答えが返ってきた。
「HPはコンシューマー製品も手掛けているが、長年の歴史の中で最も強みとしてきたのは、幅広いビジネス領域に向けたきめ細かいソリューションの展開にある。それはつまり、さまざまな用途に対応してきたということだ。例えば、今HPはサーバにおいても用途ごとにきめ細かく製品展開している。今回はこの基本的な製品戦略をタブレットにも適用した形だ。この手法こそがまさにHPらしさだと確信している」