診療データ収集を効率化--済生会熊本病院とNECが共同開発

NO BUDGET

2015-02-10 07:30

 社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院とNECは2月9日、電子カルテに入力、蓄積した診療データを収集し、分析、可視化して治療プロセスの品質管理を支援するソフトウェア「新型電子クリニカルパス分析ビューワ」を共同で開発したと発表した。

 済生会熊本病院では、2014年4月からこの機能を試行的に導入し、今回本格導入に至った。今後、この機能を活用し、バリアンス(治療における達成目標が達成されない状態)収集や分析を効率良く実施し、PDCAサイクルを高速に回すことで、医療の質のより一層の向上を目指す。

 また、NECは、「新型電子クリニカルパス分析ビューワ」を同社電子カルテシステム「MegaOak HR」の追加機能として、同日から販売を開始する。同機能は両者が共同で特許出願中としている。


日めくりパス画面(NEC提供)

 現在、多くの病院では、入院患者に対して、入院中にどのような治療や検査を実施するかといった治療プロセスを、疾病ごとに定めた「標準診療計画」に基づいて治療を行っている。

 この治療プロセスの品質を管理し改善していくために、患者ごとに目標(アウトカム)を設定し、目標未達成時(バリアンス)の患者状況などの情報を収集して分析する「クリニカルパス」という手法が導入されている。

 クリニカルパスにおいては、標準治療計画から患者の経過が逸脱していないかを把握する上で、バリアンスの情報を常に収集して分析することが重要となる。

 しかし、従来の電子カルテシステムでは、自由記述でのデータ入力が主で用語が標準化されていなかったことから、分析可能な形式にデータを加工する必要があり、分析に手間と時間が必要となる課題があった。

 今回開発されたのは、あらかじめデータ分析が可能な形式で、電子カルテから日々の診療データを収集する仕組み。これにより、標準診療計画に基づいた治療プロセスが患者の経過に与えた影響について、タイムリーに分析、確認し、次の計画策定を支援する。

 済生会熊本病院における試行では、電子カルテに日々の記録を入力することで、自動的に在院日数やバリアンスの件数、その内容と費用の表示が可能になった。

 これによって問題となる症例を瞬時に抽出可能となり、入院日数が長引く患者には疼痛(痛み)コントロールに問題があることが分かるなど、早期に現場へのフィードバックを実現可能にするという。

 本機能の特徴は以下の通り。

診療データを効率的に収集しデータ分析作業時間を短縮

 日本クリニカルパス学会監修の患者状態アウトカム用語集(Basic Outcome Master:BOM、同学会で販売)を使用し、1日分の診療データを記録できる「日めくり記録」機能を搭載した。

 同機能により、バリアンス発生(目標未達成)と判定した後すぐに、判定内容を決まった用語、形式で記録できる。また、アウトカム(達成目標)とアウトカムの達成を判断する観察項目や実測値などBOMにより定義された根拠データをひも付けて記録する。

 より正確なデータ記録を実現することで、従来は2カ月を要していた分析用のデータ収集作業を省略できる。

済生会熊本病院のノウハウを活用したビューワ機能を搭載

 済生会熊本病院がクリニカルパス活動を通じて、診療プロセス分析を長年行ってきたノウハウと実績を活用したビューワ機能を搭載。患者別の入院日数、バリアンスの内容や件数・医療資源の投入状況のバラつき、偏りの状況を自動でグラフ化し、一覧で確認できるとともに、CSV形式でのデータ出力も可能。


バリアンス表示画面(NEC提供)

電子カルテ端末から患者の経過・状態などをタイムリーに把握

 診療現場の医師や看護師らが電子カルテ端末からビューワを起動し、画面上で担当患者のバリアンス発生状況などを瞬時に確認できる。

 また、治療プロセスを疾病ごとに定めた「標準診療計画」から外れた症例の治療内容や患者状態を確認することで、治療成績に影響を与えそうなバリアンスを予測できる。

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