ファーストサーバは、クラウドベースの新サービス「Zenlogicホスティング」を2月5日から提供している。同社は2012年、顧客データ消失事故を起こした。代表取締役社長である村竹昌人氏は「事故では多くの顧客に大変なご迷惑をおかけした。その反省を踏まえ、二度と事故を起こさぬようシステムを全面刷新し、中小企業のビジネスを支援する新しいサービスを提供する」と新サービスの背景を説明した。
新たにサービスブランド「Zenlogic」を立ち上げ、2月5日にスタートしたZenlogicホスティングは第1弾となる。「従来は“レンタルサーバとはこういうもの”という事業者側の理屈を顧客に押し付けていた。Zenlogicは安全性や安定性の追求、カスタマーサポートメインで、レンタルサーバ以外のサービスを含めトータルで中小企業のビジネスを支援する」(村竹氏)と新ブランドは従来のレンタルサーバとは異なる内容のサービスを提供する。
ファーストサーバ 代表取締役 村竹昌人氏
ヤフー マーケティングソリューションカンパニー 開発本部 DevOps部 クラウド開発 リーダー 阪田浩隆氏
サービスのインフラとしても、ヤフージャパンが提供するIaaSに全面移行。ファーストサーバ自身はサービス基盤の構築と運用に特化。「最適な外部リソースを活用することで高可用性の実現、低コスト、人為的な事故を極小化する」(村竹氏)
既存のレンタルサーバのユーザー企業にも新サービス意向を進めていく方針。Zenlogicホスティングは2017年までに現行の3万顧客を倍増の6万とすることを目指す。
ウェブとメールからビジネス
ファーストサーバでは顧客に従業員規模100人以下の企業が多いことから、「大企業と同様のIT活用を望んでいるものの、専任担当者が不在、クラウドは知識不足や料金が高いなどがネックとなり、利用が進まない」と中小企業の現状を分析した。
「インターネットのビジネス活用未経験で、いきなりSalesforceを利用する顧客はほとんどいない。レンタルサーバを活用したウェブサーバ、メールサービスが中小企業がインターネットで事業をスタートする窓口となっている」
しかし、現状のレンタルサーバは、リソースが固定されアクセスが急増する際にリソースを増やすといった可変性がなく、可変性が高いIaaSは自社で管理する必要があるため、中小企業のニーズに合致したサービスがないと判断。そこでリソースは可変で、サービス事業者側が管理するZenlogicホスティングを新たにスタートする。
その他のサービスの特徴としては、(1)顧客ごとにメモリ、CPUリソースを保証し、他の利用者の影響を受けにくい環境を実現、(2)サーバの移行作業なしで常に最新の機能やスペックを利用できる、(3)豊富なセキュリティ対策機能を標準装備、(4)アプリ感覚で直感的に利用できる統合コントロールパネル、(5)専門技術をもったスタッフによるカスタマーサポートの提供――などとなっている。
料金についても「レンタルサーバとほぼ同等の価格でないと使ってもらえない」として、12カ月契約時で1仮想マシン(vCPU)、1GBメモリで税別月額2970円からで提供する。
IaaSを提供するヤフー マーケティングソリューションカンパニー 開発本部 DevOps部 クラウド開発 リーダーの阪田浩隆氏は「OpenStack基盤、バックアップ基盤、監視基盤を提供する。管理ネットワークはパブリックネットワークとは異なるネットワークを利用し、顧客が影響を受けない監視環境を作ってサービスを提供していく」と説明した。
「(OpenStack基盤での)管理ノードは冗長化して、障害時には自動フェイルオーバーとなる体制を作り、低コストで運用していくことができるようにコンピュートノードを集約、I/Oがボトルネックとならないようストレージ側でOS領域を含む全データを管理するなどの対策を取っている。万が一トラブルが起こった際にも、両社の連携を密に対処していく体制が整っている」(阪田氏)
今後の計画としては、4月から順次カスタマーサポートメニューを拡充、既存ユーザーが新サービスに移行するための移行ツールを7月以降に提供し、2016年以降はホスティング以外のサービスも提供する予定となっている。